
Embrium
Timekeeper
Embrium
Timekeeper
- release date /2025-03-15
- country /US
- gerne /Black Metal, Blackgaze, Folk, Gothic, Post-Metal
サンフランシスコ拠点のブラックゲイズ・バンド、Embriumの1stアルバム。
現体制は、Mosahefu(gt/vo)、Jade Forsythe(vo)、Joey Menicucci(gt/vo/ba)、Ayani Hayashi(ba)、Matt Baird(dr)の5名。2020年のパンデミック下、MosahefuとJade Forsythe、Joey Menicucciによるコラボレーションをきっかけに始動。2021年のセルフタイトルEPを経て完成した本作は、時間や喪失、魔術、自己探求といったテーマを描く、物語性の強い作品となっている。
ブラックメタルの激しさとシューゲイズの浮遊感を巧みに融合し、そこにフォーク由来の哀愁を帯びたメロディを重ねることで、単なる轟音に終わらない奥行きを生み出している。Mosahefuの透明感あるクリーンボーカルとJade Forsytheの鋭いスクリームの対比も印象的で、Sylvaineを連想するリスナーも少なくないだろう。
注目は#5 “Eclipse”。三浦建太郎『ベルセルク』に着想を得た楽曲で、The Band of the Falcon(鷹の団)やGodhand(ゴッドハンド)といったワードを散りばめながら、〈蝕〉をなぞるストーリーを描く。ヘヴィな展開の合間に顔を出す流麗なリードギターは、AmorphisやSwallow the Sunに通じる深い叙情もたらし、退廃的な世界観をドラマティックに演出している。
続く#6 “Awakened”は八木教広『CLAYMORE』にインスパイアされた一曲。きらびやかなドリームポップ調でスタートし、サビで一気にスクリームが炸裂する構成が爽快で、ダークな傾向の強いアルバムに鮮烈なアクセントをもたらす。
ラストはThe Mars Volta “Televators”のカバー。Kyle Schaefer(Fallujah、Archaeologist)がゲスト参加し、原曲の内省的なムードを継承しながら、激しいギターと絶叫を重ね、見事にブラックゲイズへと昇華している。
プロダクションもクリアでプロフェッショナル。先駆者たちの影響を自在に取り込みつつ、デビュー作とは思えないクオリティに仕上がっている。AlcestやSylvaine、Shedfromthebodyのファンはぜひチェックを。

Blurred City Lights
Dystopia
Blurred City Lights
Dystopia
- release date /2025-02-07
- country /Japan
- gerne /Alternative Rock, Ambient, Dream Pop, Post-Rock, Shoegaze
名古屋を拠点に活動するシューゲイズ・バンド、Blurred City Lightsの2ndアルバム。
本作は『Utopia』と『Dystopia』という対をなす二部構成になっており、ここでは『Dystopia』を主に取り上げる。
影のDystopia、終末へいたる物語
光に満ちた『Utopia』とは対照的に、『Dystopia』はアルバムの「影」を司っている。Sigur Rósに近い繊細なアンビエント〜ポストロック的手法を強化しつつ、陰影を帯びたメロディをまとわせて非常に没入感の強いサウンドスケープが展開される。コンポーザーの表記にギタリストの恵氏が多いことから、おそらく彼の嗜好が色濃く表れているものと思われる。
#1 “dreamland”の幽玄なムードの中に響くパルス音は茫漠とした宇宙空間を思わせ、#2 “Whisper”で歌われるのは「永遠の始まりから逃げ出せない」という諦念。歌詞には外部記憶やプロトコルといったフレーズが散りばめられ、牧歌的なムードの『Utopia』から未来へと針が進んでいることを示唆している。
#3 “shinjuku”はカセットテープの再生音に始まり、断続的に不穏なパルスが混入するインストで、何か不吉な予兆を連想させる。
#4 “亡霊都市”は、儚げなアルペジオが灰のように舞い落ちるメランコリックなナンバーで、荒廃した文明への深い悲しみが綴られる。終盤にわずかにアップテンポになるパートは、失ってしまった大切な人の面影を追い求め、残された僅かな力を振り絞っているかのようで、涙を禁じ得ない。
そしてハイライトは9分超の長尺曲#5 “きみのこえ”だ。MONOやExplosions In The Skyを彷彿とさせる静から動へのダイナミズムを活かした構成で、終盤に放たれる重厚な轟音が、超新星爆発やビッグバンのような宇宙規模のカタルシスをもたらしてくれる。
ラストはピアノのインスト曲#6 “the end of Dystopia?”で幕を閉じる。『Utopia』の#5 “utopiaflorist”とどこか似た響きがあり、2つの世界の関係性を示唆しているかのようだ。
光のUtopiaと影のDystopia。通して聴くとより鮮明に分かるが、この相反する二つが陰陽道の太極図のように組み合わさり、一つの作品として完成している。だが、本作にはさらに深い考察の余地が隠されている。
新宿という特異点、あるいは輪廻する環
鍵となるのは『Dystopia』の#3 “shinjuku”だ。初めは空想上の世界が綴られていると考えていたが、そこに突如として現れる「新宿」という実在の地名によって、この物語が我々の世界と地続きである可能性を帯びてくるのだ。映画『猿の惑星』における自由の女神のように物語の前提を反転させる叙述トリック的な装置として機能している。
さらにもう1つ、新宿というフレーズで私が閃いたのは、ゲーム『ドラッグ オン ドラグーン』のEエンド、通称「新宿エンド」である。「マルチバッドエンディング」と呼ばれる中でも、特に衝撃的な内容で、脳を灼かれたプレイヤーは数知れない。
新宿エンドが後の『ニーア レプリカント』や『ニーア オートマタ』へと続く物語の起点であることは、ファンの間ではよく知られている。そして『ニーア レプリカント』をはじめとしたニーアシリーズは、2周目以降のプレイで物語の裏に隠された真実を提示し、プレイヤーの価値観を反転させる手法を取っている。これは『Utopia』と『Dystopia』の表裏一体の構成と奇妙な共鳴を見せている。
また、ニーアシリーズ内においてもドラッグ オン ドラグーンの世界へと接続する可能性を示す描写が散りばめられており、両シリーズが相互に干渉し合う螺旋構造を形成していると捉えることもできる。アルバムのクロージング“the end of Dystopia?” に付けられた疑問符も、ディストピアが単なる終わりを迎えるのではないことを示している。新宿を接点としたドラッグ オン ドラグーンとニーアシリーズの構造と同様に、DystopiaはUtopiaへ回帰し、またUtopiaはDystopiaへと、輪廻しているのではないだろうか?
太陽が昇り、沈み、また昇るように。あるいはビッグバンで宇宙が誕生し、膨張の後に縮小へ転じてビッグクランチへ至り、再びビッグバンを迎える「振動宇宙論」のように──始まりも終わりも存在しない螺旋構造がこのアルバムの本質なのかもしれない(ここでWhisperの歌詞「永遠の始まりから逃げ出せない僕ら」がより深い意味を帯びてくる)。CD版の盤面においてUtopiaとDystopiaのタイトルが点対称に配置され、180度回転させても同じレイアウトになるデザインも、この説を裏付けている。
どちらが先で、どちらが後か。その先入観を排除するためにタイトルを分けたのだとしたら、推奨される聴き方は一つしかない。プレイリストでこの2つを繋げてループ再生し、永遠の螺旋に囚われるのみだ。
全ては私の妄想に過ぎないかもしれない。しかし、一見対極にある二つの世界が、実はメビウスの輪のように表裏一体で繋がっているという解釈を許すだけの強固なパワーが、このアルバムには宿っている。Blurred City Lightsは、我々に無限の空想へと飛び立つ翼を授けてくれる。そんなバンドなのだ。
音源の先へ――Blurred City Lightsの真価はステージで証明される
本作を気に入った方は、ぜひライブへ足を運んでみてほしい。トリオ編成とは思えないほどの重厚なサウンドに驚かされるはずだ。彼らのYouTubeでギターサウンドの解説が公開されているので、興味がある方はぜひチェックを。【本格シューゲイザー】現役シューゲイザーバンドのエフェクター・ギターフレーズ紹介【轟音】
なお、CDおよびBandcamp版には、Utopiaに“夕立”、Dystopiaに“sumire”というボーナストラックが追加されている。どちらも彼ららしさ全開の名曲なので、ファンであれば必ず押さえておこう。

Blurred City Lights
Utopia
Blurred City Lights
Utopia
- release date /2025-02-07
- country /Japan
- gerne /Alternative Rock, Ambient, Dream Pop, Post-Rock, Shoegaze
名古屋を拠点に活動するシューゲイズ・バンド、Blurred City Lightsの2ndアルバム。
Blurred City Lightsは2022年に結成。当初は5人編成だったが、同年8月に2名が脱退し、以降はトリオ編成で活動している。現在のメンバーは神谷なな星(Vo/Ba/Key)、恵(Gt)、大橋琉馬(Dr)の3名。
2024年にリリースされた1stアルバム『天使のいない街で』は、儚く美しいメロディとキャッチーなポップセンスが調和したサウンド、そして起伏に富んだ物語性のある構成で高い評価を獲得。私も非常に感銘を受け、2024年のベストに選出している。それから約1年ぶりとなる本作は、『Utopia』と『Dystopia』という対をなす二部構成という新たな試みがなされている。これらはサブスクでは独立した作品として配信されているが、その本質は2つで1つだ。光と影、希望と諦念が織りなす壮大なコンセプト・アルバムとして読み解くことができる。本サイトの仕様上、ページを分けてレビューすることを先にお断りしておく。
光のUtopia、希望あふれる物語
『Utopia』は、アルバムの「光」の側面を司っている。開幕を飾るインストゥルメンタル#1 “渦”から、続く#2 “swirl of lights”で煌めきをまとった轟音ギターが一気に放たれ、文字通りリスナーを光の渦の中へと導いてくれる。それはまるで讃美歌を全身で浴びるような神々しい体験だ。近年では女性ボーカルを擁する日本のインディー/オルタナ系のバンドが、ライトなリスナーからシューゲイズと認知されるケースも多いが、随所に炸裂する重厚なウォール・オブ・サウンドは、Blurred City Lightsが本格的なシューゲイズ・バンドであることを証明している。
#3 “祝祭”は、さらに光の側面が強く出たナンバーで、ワルツ調の牧歌的なメロディが、光あふれる壮麗な情景を運んでくる。太陽の光、風の匂い、木々のざわめきがそのまま音になったようで、温かな幸福感に満たされる。終盤にバッハの『主よ人の望みの喜びよ』のフレーズを引用するアレンジも秀逸だ。
#4 “星凪に願う”は、神谷氏の瑞々しいポップセンスが色濃く表れた名曲。清涼感のある歌声と切ないメロディは、羊文学やHomecomingsを好むリスナーの心を瞬時に掴むだろう。
ピアノの小曲#5 “utopiaflorist”が物語の余白を補い、そして#6 “Planet”で空へ解き放たれた祈りが未来へと羽ばたいていき、希望に満ちた結末へと到達する。
しかし、この物語は、続く『Dystopia』を聴くことで新たな視点をもたらすことになる。続きは後編へ──

くゆる
Lovescape
くゆる
Lovescape
- release date /2025-02-19
- country /Japan
- gerne /Alternative Rock, Blackgaze, Doomgaze, Grunge, Post-Rock, Shoegaze, Slowcore
東京のシューゲイズ・バンド、くゆるの1stアルバム。
2022年の結成以降、圧倒的なライブパフォーマンスで注目を集めてきたくゆる。その初のフルアルバムが本作『Lovescape』である。現メンバーは以下の5名。
- 下戸あやな (Vo/Gt)
- 飛田熙 (Gt)
- 上田隆太 (Gt)
- 河瀬塁 (Ba)
- 山口航 (Dr)
国内屈指の轟音による暴力と美の対比
サウンドの核となるのは、トリプルギターが生み出す圧倒的な轟音だ。リスナーを竜巻の中に叩き込むかのような苛烈さは、国内でもトップクラスを誇る。さらにドラムは暴力的な音の壁を貫くほどパワフルで、強靭なサウンドの屋台骨として機能している。
楽器隊の過激さゆえ、初めはシューゲイズとかけ離れた印象を持つかもしれないが、蜃気楼のように幽玄にたなびくボーカルが、くゆるを本格的なシューゲイズたらしめている。この「暴力」と「美」のコントラストはくゆるの世界観にとって欠かせない要素だ。
ジャンルを横断する多様な楽曲群
単なるシューゲイズに留まらない、ジャンルを横断する多様な楽曲群も本作の大きな魅力だ。
静と動を交錯させながら闇へ堕とす#1 “mope”。鼓膜を苛む強烈なノイズが渦巻き、やがて全てを破壊せんばかりにブラックゲイズ風の轟音へ収束する#2 “蒼い空”。スロウコアの寂寥感とドゥームゲイズの重厚さを巧みにブレンドした#7 “momo”、ポストロック譲りの展開美で広大なサウンドスケープを演出する#8 “BESIDE”など、8曲それぞれが非常に強い個性を放っている。
近年、日本ではNothingやWhirrなどをルーツとするヘヴィシューゲイズ志向のバンドが増加傾向にあるが、くゆるはさらに一歩先の未来を提示している。エクストリームなハードコアやメタルが集うイベントにも招致され、過激な轟音でオーディエンスを熱狂させている事実が、彼らが日本のシューゲイズ・シーンにおけるオルタナティブ精神の真の体現者であることを雄弁に物語っている。
くゆるの真髄はライブにあり
サウンドプロダクションはクリアで快適でありながらも、ライブに近いエネルギーを有しており、何度もライブを経験しているリスナーでも高い満足感を得られるだろう。ライブではさらに全身を切り刻むような音圧で襲いかかってくるため、未体験であればぜひ直に浴びてブッ飛ばされてほしい。きっと「くゆるはライブこそ真骨頂」だと実感するはずだ。なお耳栓は必ず持参のこと。
カバーアート考察
次はカバーアートに注目したい。
暗闇の中で目を閉じて身をくるめる姿に私は胎児を連想した。胎内で聞いている音は、母親の心臓の脈動と血流によるノイズが主であるという。絶え間ない喧騒の中で耳にする母の呼びかけや歌声は、暗闇に差し込む光のようにいっそう美しい音色として届いているに違いない。これはある種のシューゲイズ・サウンドの原型とも解釈できる。
近年のシューゲイズ・ブームは、厳しい現実から「愛にあふれる場所」=「Lovescape」への逃避、すなわち胎内回帰願望の表れではないだろうか。くゆるの音楽は、この願望を満たすためのサウンドトラックとして最適な作品である。
私に還りなさい、生まれる前に──(突然のエヴァで締め)

KRISHNV
Craving and dirges
KRISHNV
Craving and dirges
- release date /2025-12-12
- country /Japan
- gerne /Alternative Rock, Dark Ambient, Doomgaze, Experimental, Folk, Noise, Post-Metal, Post-Rock, Progressive
東京を拠点に活動するエクスペリメンタル・ロック・バンド、KRISHNV(クリシュナ)の2025年作。(ディスコグラフィーによると3rdアルバムのもよう)
KRISHNVは、Takumi Izawa(ギター/ボーカル)とShunsuke Shibuya(ベース)により2019年に結成。
彼らの音楽性を一言で表すならオルタナティブ暗黒舞踊。太古の祭祀のようなトライバルなリズムが律動する中、泥流のような轟音がゆっくりと浸食し、マントラめいた妖しい歌唱が延々と紡がれる。総じてTOOLの呪術的なリズムワークとDead Can Danceの神秘性の融合を連想させるが、日本語詞が異国の呪文のように変異して響くのは、このバンドに宿る独自の魔力に他ならない。特に19分強におよぶ#10 “Obsidian”の没入感は圧巻で、もはや一種の領域展開といえるレベルだ。
ライブではサポートメンバーを迎え、ツインドラム&トリプル(時にクアドラプル)ギターによる轟音の壁をもって観客を圧倒する。暗闇に浮かぶVJの映像をバックに身を捩りながら一心不乱に音を紡ぎ出す様は、もはや演奏ではなく儀式そのものだ。初めは不意に異界を覗いてしまったような根源的恐怖に襲われるが、音に身を委ねた瞬間、身体は自然と躍り出し、恍惚の頂へと到達するだろう。
彼らが呼び寄せるのは、聖か、邪か──その真相は、あなた自身の目と耳で確かめて欲しい。

Slow Snow Slide
THE EXHIBITION
Slow Snow Slide
THE EXHIBITION
- release date /2025-05-03
- country /Japan
- gerne /Alternative Rock, Gothic Rock, New Wave, Post-Punk, Post-Rock, Shoegaze
山形県酒田市を拠点に活動するシューゲイズ・バンド、Slow Snow Slideの2ndアルバム。
2016年に本格始動し、2019年に1stアルバム『paradise lost』を発表。メンバーチェンジを経て2022年に現体制で再始動し、約6年ぶりとなるニューアルバムを完成させた。
制作時のメンバーは以下の5名。(※リリース後、MASAKUNIは脱退)
- GOE(ボーカル/ギター)
- TAKEDA NATSUKO(ギター/ボーカル)
- YAMA(ギター)
- MASAKUNI(ベース)
- YOKOCHIN(ドラム)
1stアルバムでは、ポストロックとシューゲイズを軸にピアノやヴァイオリンといったクラシカルな要素を取り入れ、既存の枠に留まらない独自の世界観を打ち出した。バンド名は「緩やかな雪崩」を意味し、持ち味である壮大なサウンドスケープを象徴している。
『THE EXHIBITION』は、ロシアの作曲家ムソルグスキーによる『展覧会の絵』に着想を得て制作。トリプルギター&ツインボーカル体制を活かし、さらに重層的なサウンドへアプローチしている。インストゥルメンタルの“Promenade”を含む全7曲は、それぞれの楽曲が異なる情景を描きつつ、まるで展示室を巡るように展開していく。
注目曲ピックアップ
#2 “Drawing on the blank page”
ダイヤモンドダストのようなアルペジオと、吹雪のような轟音ギターが交錯しながら、ワルツ調にゆるやかに展開する。ツインボーカルの美しいハーモニーによる温かな叙情は、凍りついた雪原に朝日が満ちるような幸福感をもたらす。
#3 “Luzifer”
ゴス/ニューウェイヴの黒い血が匂い立つダンスチューン。冷たいトーンのギターと、GOEの艶のある歌声が妖しく絡み合う。ドラム連打&轟音ギターのアクセントも秀逸。
#6 “Nihilistic”
ツインギターが絡み合いながら、静と動を巧みに織り交ぜた起伏のある展開で魅せる。後半は一気にダイナミックな轟音を解き放ち、エモーショナルに歌い上げながら荘厳なクライマックスへ。随所に覗くキャッチーなギターフレーズにも彼らのチャレンジ精神が現れている。
#7 “Rasen Kaindan”
歪んだベースが地を這い、黒い波動を撒き散らすダーク・アンセム。ラストは轟音とともに絶叫が響き渡り、リスナーを暗黒の奈落へと引きずり込む。
曲ごとの個性が際立ちながらも、Promenadeを軸に世界観を共有する構成は、まさに『展覧会の絵』の現代的再解釈といえるだろう。
本作は現在CDのみでリリース中(サブスク未配信)。公式オンラインショップまたはライブ会場で購入できる。ぜひ現物を入手して、壮大な物語へと誘うイマーシブ体験を味わってほしい。
Slow Snow Slideは東北〜関東の各所を巡るリリースツアーを実施中。遠方のファンにとっては、彼らのパフォーマンスを体感する貴重な機会となる。ツアー情報は公式サイトおよびSNSでチェックを。
最新情報はSlow Snow Slideの公式サイト・SNSをチェック

Cuspid
Whiplash
Cuspid
Whiplash
- release date /2025-10-15
- country /US
- gerne /Alternative Rock, Dream Pop, Grunge, Nu Metal, Shoegaze, Slowcore
ロサンゼルスと北京を拠点に活動するシューゲイズ・アーティスト、Cuspidのデビュー1st EP。
現時点で明かされているのは、DeftonesとLana Del Reyを敬愛する18歳という情報のみ。そんなミステリアスな新人が、デビュー作にして驚異的なクオリティを見せつけてきた。
ヘヴィなギターと幻想的なメロディのマッチングはWispを彷彿とさせる。しかしCuspidのボーカルはより退廃的で深みがあり、楽曲も全体的にダウンテンポかつヘヴィで、まるで海の底へ沈み込むような深いメランコリーが堪能できる。その点では、むしろGraywaveやSlow Crushに近いだろう。もしWispに「もう少しダークさが欲しい」と感じていたリスナーがいるなら、本作はまさに理想的な作品だ。
#1 “Debris”では、轟音ギターが空間を切り裂くように唸りを上げ、霧のようなボーカルが虚ろに響く──その対比の美しさに思わず息を呑む。#2 “Floor 12”では、不穏なアルペジオを散りばめながらゆったりと進行し、終盤に向けて徐々にボリュームを上げ、一気に哀しみを解き放つ。続く#3 “Flyaway”の繊細なイントロへとシームレスに繋がる展開も秀逸だ。ラストの#4 “Whiplash”はスロウテンポでメロディを丁寧に紡ぎ、深い余韻を残して幕を閉じる。全4曲、もれなく名曲レベルだ。
今後の期待も含め、当サイトのAOTY本命候補にノミネート。Wispに続く次世代のシューゲイズ・アーティストとしてぜひ抑えてほしい。現時点でのSpotifyの月間リスナーは3桁(680)だが、今後の推移に注目だ。

Keep
Almost Static
Keep
Almost Static
- release date /2025-03-10
- country /US
- gerne /Alternative Rock, Dream Pop, Grunge, Post-Punk, Shoegaze,
ヴァージニア州リッチモンド出身のシューゲイズ・バンド、Keepの3rdアルバム。
2013年に結成。初期はNickとWesのデュオだったが、徐々にメンバーを増やし、現在は以下の4名となっている。
- Wes Smithers(ギター・サンプリング)
- Will Fennessey(ベース)
- Levi Douthit(ギター・シンセ)
- Nick Yetka(ドラム・ボーカル)
The CureやThe Smashing Pumpkins、Slowdiveからの影響を公言しているが、それだけでは留まらない幅広い音楽性を備えている。1stアルバムはThe CureやDIIV譲りのドリーミーなポストパンク系が多かったが、2nd以降ではさらに多彩さが開花。グランジ系のヘヴィな轟音を軸としながらも、#8 “Sodawater”では、ギターが煌めくドリームポップ、#11 “Hurt a Fly”ではエモ風のパワフルな疾走チューンも飛び出し、単純にシューゲイズに括れないプリズムのような輝きを見せてくれる。
しかし、決して方向性が散漫にはならず、Keepの真骨頂である哀愁美はアルバムを通して揺るがない。全編に渡り、エモーショナルなボーカルに美しいリードギターが絡み合い、深い哀愁を織り上げている。メロディアスな旋律と力強いギターリフの調和は、プロデューサー/エンジニアのZac Montez(Whirr・Cloakroom)の手腕の賜物でもあるだろう。昨今のヘヴィシューゲイズ/グランジゲイズと比較してもメロディアスで聴きやすいため、入門にも最適な作品だ
今年は4〜5月に同郷の盟友Turnoverとのツアーを完遂した後、7〜9月にサマーツアー(8月はLeaving Timeと共演)、10月末からはEU/UKツアー(Slow Crushと共演)がスタートするなど、休む暇もないほどライブ活動に精を出している。今後ますます注目を集めることは確実だろう。来日にも期待したい。

Church of the Sea
Eva
Church of the Sea
Eva
- release date /2025-04-11
- country /Greece
- gerne /Alternative Rock, Doom Metal, Doomgaze, Folk, Gothic, Industrial
ギリシャ・アテネ拠点のドゥームゲイズ・バンドChurch of the Seaによる2ndアルバム。
2017年にアテネで結成。現メンバーは以下の3名。
- Irene(ボーカル)
- Vangelis(ギター)
- Alex(シンセサイザー/サンプラー)
民俗音楽の血を継ぐエキゾチックなボーカル、地を這うようなヘヴィなギター、幽玄なシューゲイズのテクスチャーが織りなす多層的なサウンドスケープが彼らの真骨頂。
本作タイトル『Eva』は創世記のイヴに由来し、新たな試みとして歌詞にギリシャ語を取り入れている。その歌声はシャーマンの詠唱のように神秘性を帯び、神話を音へと昇華している。
ハイライトは#3 “Eva”。トライバルなパーカッションにのせて神秘的なボーカルが優雅に舞い踊る。後半からドゥーム風のギターが加わって徐々にボルテージを上げていき、儀式的な高揚をもたらす。まるでDead Can Danceがドゥームゲイズ化したような荘厳なナンバーだ。
ベッドルームからエデンの園へと誘う霊験あらたかな響きはさすがギリシャ産。Dead Can DanceやChelsea Wolfe、Shedfromthebodyのファンはぜひチェックを。

Photographic Memory
I Look at Her and Light Goes All Through Me
Photographic Memory
I Look at Her and Light Goes All Through Me
- release date /2025-05-30
- country /US
- gerne /Alternative Rock, Bedroom Pop, Electro Pop, Emo Rap, Grunge, Indie Electronica, Nu Metal, Shoegaze, Synth Pop
LAを拠点とするプロデューサー/ミュージシャンMax EpsteinのプロジェクトPhotographic Memoryの2ndアルバム(Spotify準拠)。USインディレーベルdeadAir Recordsよりリリース。
Photographic Memory名義での活動は2013年に始まり、その傍らQuannnicやMilitarie Gun、Cold War Kidsなどの作品制作やライブサポートにも関わってきた。また、Wispの『Pandra』期から楽曲制作に携わり、『If Not Winter』ツアーではサポートアクトを務め、ステージ上でコラボも行うなど、多方面でその才能を発揮している。
初期はベッドルームポップやドリームポップ中心のドリーミーな作風だったが、本作ではエモ・ラップ、インディ・エレクトロニカ、ニューゲイズなど、多彩な音楽性を展開している。
注目曲ピックアップ
#8 “Clearly” ― ポーター・ロビンソンを思わせる清涼感あふれるエレクトロ・ポップ。
#10 “Born 7:7 (feat. Darcy Baylis) ” ― 幻想的なエレクトロニカとヘヴィシューゲイズが見事に融合。
#11 “Heartstyle (feat. Wisp) ” ― きらびやかなシンセをまとったエレクトロ色の強いダンスチューン。Wispの新たな一面が楽しめる。
#12 “Love In My Heart” ― ニューメタル〜グランジ風のヘヴィなインスト曲。KornやAlice in Chainsのようなゴリゴリしたギターが印象的。
#17 “Spill (feat. Kraus) ” 重厚なギターのサウンドウォールに淡い歌声が漂うメランコリックなヘヴィシューゲイズ。Krausらしさが発揮された名曲。本作のハイライト。
プロデュース経験で磨き上げられた越境性が発揮された充実作。シューゲイズの新世代アーティストの一人として、Wispとあわせ今後の動向に注目したい。


