ethel cain - perverts

Ethel Cain

Perverts

Ethel Cain

Perverts

  • release date /
    2025-01-08
  • country /
    US
  • gerne /
    Ambient, Dream Pop, Drone, Ethereal Wave, Experimental, Gothic, Industrial, Slowcore
Light
Dark
Soft
Heavy
Clear
Noisy
Slow
Fast
Pop
Extreme

フロリダ州タラハシー出身のシンガーソングライター、Ethel Cainの2ndアルバム。

Ethel CainはHayden Silas Anhedöniaのソロプロジェクトで、アメリカ南部の宗教的抑圧や家族の因習を題材に、教会音楽やグレゴリオ聖歌、フォーク、スロウコア、アンビエントを融合した独自の世界観で知られる。2019年のEP『Carpet Bed』、2021年の『Inbred』を経て、2022年の『Preacher's Daughter』で世界的な認知を獲得している。

『Perverts』は、前作『Preacher's Daughter』の歌を主軸とした叙情性から離れ、ドローン、ダークアンビエント、ノイズの重厚な音響を前面に押し出した内容となっている。背景にあるのは、Ethel Cainの音楽に根ざすサザンゴシックの感覚だ。南部の宗教的抑圧、歪んだ家族関係、罪と罰、亡霊のような記憶が全編に深く刻み込まれている。9曲・約90分、10分超の楽曲が複数並ぶ構成で、明瞭なメロディよりも静寂とノイズ、反復が主役となり、暗闇の中をゆっくりと沈降していくような緊張感が後半まで持続する。

タイトルトラック#1 “Perverts”は賛美歌で幕を開ける瞑想的なダークアンビエント。断続的なパルス音が差し込まれ、じわじわと緊張感を高めていく。先行公開された#2 “Punish”は、抑制されたピアノと歌声が静けさを際立たせ、徐々に持続音を伴うギターに飲み込まれたのち、最後は冒頭のピアノへと回帰する。本作の方向性を象徴する一曲であり、公開当時は大きな反響を呼んだ。後にChelsea Wolfeとのステージで披露されたことも話題を呼んだ。

#3 “Housofpsychoticwomn”では、軋むような持続音と膨張するノイズの中、虚ろなコーラスがオーロラのようにたなびく。執拗にリフレインされる「I love you」は、ある種の狂気すら漂う。

#4 “Vacillator”は、極限までノーツを削ぎ落としたスロウコア風の楽曲で、フォーク調の穏やかな歌声が際立ち、深い闇の中で束の間の安堵をもたらす。しかし#5 “Onanist”では再び闇へと引き戻される。重いノイズをまといながら歌声がゆっくりと漂い、音は突如として途切れ、再び闇の中に投げ出されるような空虚さが襲う。

#6 “Pulldrone”でいよいよ闇の最深部に到達する。不快な持続音を背景に12節の独白が死者の祈祷のように積み重なり、徐々に音量を増すピッチの歪んだサイレンのような音が恐怖感を煽る。約15分にわたり、リスナーを逃げ場のない闇へと閉じ込める。ダークアンビエントやフューネラルドゥームに匹敵するレベルの暗さで、本作の暗黒面を象徴する一曲といえる。

#7 “Etienne”は雨音を背景にピアノとアコギが穏やかな調べを綴るインスト曲。#8 “Thatorchia”では、膨張と収縮を繰り返すサウンドエフェクトが強い酩酊感をもたらし、徐々に厳かな歌声が立ち現れる。ドローンギターを伴いながら、Loveliescrushingを彷彿とさせる天上的な美しさへ到達する。

ラストの#9 “Amber Waves”はもの静かなフォーク調で、再び重厚なギターが顔を出しながらも重苦しさはなく、暗闇からの解放を示唆して幕を閉じる。

『Perverts』は、Ethel Cainの持つ物語性やサザンゴシックの血脈を特異な音響体験として結実させた挑戦的な作品だ。明快なメロディよりも、閉塞感をともなう暗さと身体感覚を揺さぶる持続的な没入感が核となっている。繊細な音響と重厚なノイズという対照的なアプローチの融合は、ある種のドリームポップやシューゲイズと解釈することも可能だろう。LoveliescrushingやBIG|BRAVE、あるいはFVNERALSを好むリスナーにも強くオススメしたい。これほど極端な暗黒性を備えながら、多くのリスナーの支持を集めている点も興味深く、来日公演への期待も高まるばかりだ。

なお同年リリースの『Willoughby Tucker, I'll Always Love You』はよりメロディアスで、多くのリスナーに親しみやすい作品となっている。双方を比較することで、Ethel Cainの世界観をより深く楽しむことができるだろう。