
散▽巡
渦流に鳴く
散▽巡
渦流に鳴く
- release date /2025-03-29
- country /Japan
- gerne /Alternative Rock, Ambient, Grunge, Post-Rock, Shoegaze, Slowcore
大阪のシューゲイズ/オルタナティブロック・バンド、散▽巡(さんざめく)の1st EP。
2023年3月26日結成。本作の制作メンバーはぺん(ギター/ボーカル)、あかね(ギター)、しま(ベース)、yuyA(サポートドラム)の4名。
私が散▽巡を知ったのは2024年7月。東京初ライブの告知をきっかけに音源をチェックしたところ、そのダークな世界観に触れてたちまち虜になりました。
儚く繊細なパートはSigur Rós、ポエトリーリーディングと激情のダイナミズムはenvy、日本語で仄暗い情念を歌い上げる姿には天野月子がふと浮かんだりと、既存のシューゲイズに収まらない多彩な要素が絡み合い、独自の世界観を創り上げています。とりわけ静と動のダイナミズムは圧巻で、陽光きらめく草原から暗黒の深海までをも横断するような体験をリスナーにもたらします。
そして特筆すべきはぺん氏のボーカルの表現力。サウンドの起伏に沿って、母が子を寝かしつけるような優しい囁きや、轟音を切り裂くほどのエモーショナルな叫びも巧みに操り、語り手として強烈な存在感を放ちます。ぺん氏が紡ぐ歌詞も、哀しみや痛み、嘆きといった生々しい感情が渦を巻き、日本語ならではの陰影もあいまって聴く者の心を強く揺さぶります。
散▽巡『渦流に鳴く』各曲レビュー
#1 “光芒”
光が降り注ぐようなギターと儚げなウィスパーボイスが溶け合う美しいイントロダクション。
#2 “残鳴”
ポストロック風にゆったり進行しながら、徐々にボルテージを上げ、美轟音を解き放ちカタルシスを演出。
#3 “=rand(scp)”
陰鬱なメロディとともにノイズが激しく渦巻き、カマイタチのように全身を切り裂いていく。本作で最もダークな1曲。タイトルの「scp」というフレーズに思わずニヤリ(狙ってますよね?)。
#4 “息吹”
トライバルなリズムによって陶酔へと誘う新境地的ナンバー。降り注ぐギターの美しさといったら、神々しさすら感じられるほど。
#5 “雫の中の彗星”
壊れそうなほど繊細なサウンドスケープに「知りたくなかった」のリフレインが切なく響く。突如轟音が波のように押し寄せたと思うと、また静寂が戻り、切なさをいっそう際立たせる。
#6 “浮遊” ※CD限定ボーナストラック
岡山のシューゲイズ・バンドlittle lamplightのギタリスト黒田麻衣を迎えた美轟音シューゲイズ。トリプルギターが織りなす重厚なテスクチャーと美しいメロディの融合はまさしくシューゲイズの真骨頂。この曲のためにCDをゲットする価値あり!
光と闇、静と動、美と狂気──そのすべてが渦流のように交錯する全6曲。散▽巡の美学を存分に味わえること間違いなし。
さらに会場限定で入手できるデモ音源には、『サンザメク』や『ニヒリズム』、『崩潰』といったライブの定番曲も多数収録。いずれも名曲なので、ライブに行かれる際はぜひゲットしてください。
本作リリース後に神崎渚(ドラム)が正式加入し、バンドが本格始動した今、「さんざめく」(ざわめき立つ)の言葉どおり、日本のシューゲイズ界を大いに賑わせてほしいですね。