
2beef
Orbs
2beef
Orbs
- release date /2025-07-02
- country /Japan
- gerne /Alternative Rock, Grunge, Nu Gaze, Post-Rock, Shoegaze
東京のシューゲイズ・バンド、2beefの2nd EP。
前作の1st EPでは、NothingやWhirrといったUS産ヘヴィシューゲイズから、20年代のニューゲイズまで幅広く吸収しつつ、ブレイクコアをも取り込んだ感度の高いサウンドで、多くのリスナーを驚かせました。また、90〜00年代のアニメやゲームなどのオタクカルチャーを融合した世界観も、彼らの大きな特徴です。
以前は3ピースでしたが、ドラムが脱退し、現在の正規メンバーはウエダ(ギター・ボーカル)と梁取瑶(ベース)の2名。※梁取瑶氏はアートワークやグッズのデザインも担当。
本作は、異世界転生をテーマにしたストーリー性のある構成となっています。では、さっそく異世界へとダイブしてみましょう。
2beef『Orbs』各曲レビュー
#1 “Helvetica standard”
幻想的なイントロに続き、ヘヴィなギターとマイルドな歌声が重なって陶酔へと誘うオープナー。アトモスフェリックなパートはポストロックの質感もにじませ、魔法に魅了されるような心地良さが味わえます。タイトル「Helvetica standard」は、あらゐけいいち氏の漫画由来のオタク的なリファレンスであると同時に、Helveticaフォントの汎用性の高さを踏まえたデザイン的な意味も込められているかもしれません。
#2 “(where are you?)”
ギターの淡いレイヤーにピアノやささやき声が溶け込み、現実と幻想の境界を曖昧にするサウンドコラージュ。最後に聞こえる微かな「さようなら」の残響が、そっと空虚感を植え付ける。
#3 “unreal”
スローテンポでじっくりメランコリーを紡ぐヘヴィシューゲイズ。轟音の中に切ない歌声が響き渡り、狂おしいほどに胸を締め付ける。本作のハイライト。
#4 “if you are still here”
#3を継承したヘヴィなサウンドながらも、光が差し込むような開放感があり、微かな希望を漂わせながら、物語は幕を閉じます。「もしまだあなたがここにいたら」──主人公は元の世界へ帰ったのでしょうか……それとも──?
4曲12分とコンパクトながら起伏のある構成で、想像力が掻き立られること間違いなし。異世界転生ものは多くの人気作品がありますが、皆さんはどんな物語を思い浮かべましたか? 個人的には『エルハザード』を思い出して、胸が熱くなりました。
2beefの世界観を表現するアートワーク
2beefはスタイリッシュなアートワークも大きな見どころ。Helvetica系のサンセリフ体とブルーを基調としたデザインで統一され、Y2K的デジタルアートの雰囲気を巧みに表現しています。それでいて、普段の梁取瑶氏は有機的なデザインがメインという点も興味深いところ。気になる方は、ぜひ彼のアート活動もチェックしてください。梁取 瑶 Yoh Yanatori(Instagram)
ライブ活動再開、海外勢との交流の期待
2beefは、ドラムとギターのサポートメンバーを迎え、2025年8月29日よりライブ活動を再開しました。私も現地で拝見しましたが、出音や佇まいはまさに最前線のUSシューゲイズそのもので感動しました。USシューゲイズ勢が来日したらガンガン対バンしてほしいですね!
今後のライブ情報は、2beefのXまたはInstagramでチェックしてください。NothingやWhirr、Leaving Time、Trauma Ray、Glareなどが好きな方はぜひ!
バンド名「2beef」を考察
「2beef」=「2つの牛肉」と、一見意味のないフレーズですが、名は体を表すもの。彼らのアイデンティティがこっそり仕込まれているに違いありません。私は音楽性や世界観から、この2案を導き出しました。
- 2beat説:ハードコア・パンクでよく用いられる2ビートからの連想。
- ToHeart説:Leafの名作ADV『ToHeart』から派生し、2heart → 2beef という遊び心。heart(心)の対義語としてbeef(肉)に置き換えた?
オタクカルチャーに精通した彼らなら、こうした言葉遊びもあり得そうです。気になる正解は、ぜひライブで本人に確認してみてください(笑)。
YouTubeは未配信のため、試聴用に『Kanon』を貼っておきます。本作には未収録ですのでご了承ください。
前作のレビューはこちら▶2beed『Lucky』レビュー