
Hermyth
Aether
Hermyth
Aether
- release date /2025-03-07
- country /Italy
- gerne /ambient, doom-metal, doomgaze, drone, post-rock, shoegaze
イタリアのコズミック・ドゥームゲイズ・デュオ、Hermythの2ndアルバム。
Hermythは2021年に、Nick Magister(ギター、シンセ、ドラム)とTherese Tofting(ボーカル)によって結成。NickはGhostheart Nebula、ThereseはFuneral Voidといったドゥームメタル系バンドの出身であり、Hermythにもその要素が色濃く受け継がれています。なお、「Hermyth」は、おそらくギリシャ神話の神・ヘルメス(Hermes)と神話(Myth)を掛け合わせた造語と推測されます。
本作のタイトル『Aether』(エーテル)は、古代において天空を満たすと信じられていた第五元素を意味しています。現在では科学的に否定されているものの、「この世のものとは思えない美しさ」を表す言葉として、今なお象徴的に使われています。
荘厳なキーボードと美しいギターにThereseの幽玄なボーカルが調和したサウンドは、まさにエーテルの名にぴったり。一方で、1stアルバムに比べるとギターのトーンに煌めきが増し、ボーカルの存在感もより前に出ているため、シューゲイズらしい溶け込むような感覚はやや控えめになった印象です。
とはいえ、近い音楽性を持つISONに比べると、曲の尺は短めで、歌メロ重視の展開となっているため、ドゥームゲイズやポストロックを「長くて退屈」と感じる人にもしっくりくるはずです。
ここからはお気に入りの曲をピックアップ。
#1 “Heavens”
星々の煌めきを宿したギター、恒星が放つ光の波のようなシンセ、儚く美しい歌声が織りなす天上の調べ。まるで幽体離脱して星間飛行をしているかのようなスピリチュアルな感覚を味わえます。日本の有名な曲に例えるなら、渡辺典子『火の鳥』をドゥームゲイズ化したらこんな感じかもしれません。
#2 “Aether”
民族音楽や伝統音楽由来のエキゾチシズムが感じられる神秘的なナンバー。古代の人々が星々の煌めきから神話のキャラクターを見出し、敬虔な気持ちを抱いた──そんな感覚を追体験できます。
#5 “Divination”
Aeonian SorrowのGogo Meloneがゲストボーカルとして参加。情感豊かにビブラートで歌い上げる姿は、Thereseとはまた異なる魅力を放っています。さしずめThereseのボーカルが青いリゲルだとすれば、こちらは真っ赤に燃えるアルデバラン。
#6 “The High Priestess”
最もアトモスフェリックで、アルバムタイトル『Aether』の世界観を濃密に味わえるナンバー。10分を超える長尺で、じっくりと浸らせてくれます。目を閉じて聴けば、満天の星空がまぶたの裏に浮かんでくるよう。
全体的にシューゲイズ要素はやや控えめになっていますが、Hermythならではの神話的宇宙観は健在。ぜひ、エーテルの海に身をゆだねて、44分間の星間旅行をお楽しみください。