Self Destruction in Your Dreams

焦葬

Self Destruction in Your Dreams

焦葬

  • release date /
    2025-02-08
  • country /
    Japan
  • gerne /
    black-metal, blackgaze, depressive-black-metal, post-black-metal, progressive, shoegaze
Light
Dark
Soft
Heavy
Clear
Noisy
Slow
Fast
Pop
Extreme

岐阜発デプレッシブ・ブラックゲイズ・バンドSelf Destruction in Your Dreamsの1stアルバム。A.Aoki(Gt/Vo)、ののの(Gt/Key/Vo)、Takeuchi(Gt)、食事報告ニキ(Ba)、Redkensamba(Dr)の5人編成で制作されました。

ブラックゲイズ(ブラックメタル×シューゲイズ)はAlcestやDeafheavenのおかげでご存知の方も多いでしょうから、まずデプレッシブ・ブラックメタル(以下DSBM)について軽く解説を。

90年代初頭、ノルウェーのブラックメタルは、「インナーサークル」と呼ばれる集団による教会放火や殺人事件をきっかけに、過激なイメージを確立しました。一方、DSBMは苦悩、絶望、鬱、自殺といった内省的なテーマを深く掘り下げ、陰鬱なムードを打ち出しているのが特徴です。ブラックメタルが外へ向かう破壊衝動を描くのに対し、DSBMは自身の内にある破滅願望を音に込めています。

世界でもトップクラスに治安が良いとされる日本ですが、将来への不安や孤独、鬱に苦しむ人が多く、自殺率が高いことで知られています。よってDSBMは、我々日本人の抱える闇に深く共鳴する音楽の1つだといえるでしょう。

前置きが済んだところで、さっそく本題に入ります。

本作は短いポエトリーリーディング#1“Five Seconds of Pleasure”で幕を開け、続く#2“ひとでなしの恋”で、陰鬱なトレモロギターと悲痛な絶叫で聴く者の魂を一気に地獄へと引きずり込むも、随所に女性コーラスや儚げなキーボードを散りばめ、闇と美のコンストラストによってブラックゲイズ好きの心をしっかり掴んできます。ブレイクしてポエムパートを挟み、絶叫とともに轟音を放ちクライマックスへ──初っ端から9分越えの長尺ながら緩急の妙で魅せてくれます。

#3“灯火”の冒頭では、Silent Hill 2の『Theme of Laura』のオマージュと思われるメロディが顔を出します。ホラゲー・鬱ゲー界の校歌みたいなものなので、初耳でしたらこの機会に覚えて帰ってください。その後は、絶叫を皮切りにワルツ調のピアノが主体となり、爆走パートへなだれ込みます。ここから更に切れ味の良い刻みリフが暴れまわり、ヘドバン欲を否応なく掻き立てます。そして再びワルツ調のピアノが顔を出し、冒頭のTheme of Laura風のメロディが戻ってきて、絶望の輪廻を暗示するかのような円環構造で締めくくられます。10分を超える長尺ながら非常にドラマティックで、間違いなく本作のハイライトといえるでしょう。

#5“ひとりぼっちの心中”は、ののの氏の美しい歌声をメインにしたヘヴィシューゲイズ風のナンバー。和の情緒を感じさせるメロディが、既存のUSシューゲイズにはない個性を打ち出しています。突如としてブラスト&絶叫で爆走する展開もスリリング。

ポストロック風にゆっくりと哀しみを紡いでいく#6“雨”、後期Emperorに通じる不穏なフレーズが心をかき乱す#8“Red Eyes”、腐臭漂うリフで毒沼に沈める#9“If”(コントのオチみたいなフレーズが飛び出すのも面白い)など、バラエティーに富んだ楽曲が次々と繰り出され、最後まで息をつく暇を与えません。音質もクリアで、デビューアルバムとは思えないクオリティ。

ここからは歌詞を考察していきます。歌詞に注目すると、第三者が介在しない『僕』と『君』だけの閉じた世界が徹底して描かれています。さらにゲシュタルト崩壊を起こしそうなほど【死・殺・壊・消】といった負のワードが溢れかえっていて、あまりの異常さに読んでいて気が滅入りそうになることでしょう。

おそらく『僕』はすでに正気を失った、ミステリでいう『信頼できない語り手』であって、実は『君』の存在は『僕』の妄想の産物なのではないでしょうか。自分の頭の中に創り出した『君』を愛しながらも破滅を願う矛盾がさらなる狂気を生み、『僕』と『君』が延々と死を繰り返す夢の世界に囚われているのかもしれません。#3“灯火”の円環構造もこの説を裏付ける証拠の1つです。Self Destruction in Your Dreams=『夢の中での自己破壊』とは実に言い得て妙ですね……あっこれ全部私の妄想の話しね!

本作が気に入った方は、新曲の“3番ホーム、僕は飛び込む”もぜひチェックしてください。音と歌詞が密接にリンクし、語り手の壊れきった精神状態が浮き彫りになるとても恐ろしい曲です。部屋の明かりをすべて消し、ガタガタ震えながら聴きましょう。この調子で次はNorttよろしく葬式系の激遅デプレブラックドゥームなんていかがですか?(願望は声に出していくスタイル)

また、ソロプロジェクトが多いDSBM系にあって、バンド編成でライブ活動を行っているのも彼らの強み。2025年5月10日㈯にワンマンライブが予定されているので、近隣の方はぜひ足を運んでみてください。今後もkokeshiやLifeblood、SAWAGI、Paleたちと共に日本全土に闇を撒き散らして欲しいものです。

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