ダークシューゲイズ・ドリームポップのベストアルバム(2025年版)ダークシューゲイズ・ドリームポップのベストアルバム(2025年版)

BEST OF
DARK
SHOEGAZE & DREAMPOP
2025

順次追加予定
完全版公開までしばしお待ち下さい

Seasurfer

Electronic Monsters

Seasurfer

Electronic Monsters

  • release date /
    2025-05-30
  • country /
    Germany
  • gerne /
    Darkwave, Electro Pop, Gothic, Post-Punk, Shoegaze, Synth Pop
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Pop
Extreme
Light
Dark
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Pop
Extreme

ドイツ・ハンブルク出身のドリームパンク/シューゲイザー・デュオ、Seasurferの4thアルバム。

2013年にDirk Knightを中心にハンブルクで結成されたSeasurferは、初期2作ではドリームポップ/シューゲイズを軸にした夢幻的なウォール・オブ・サウンドを展開していた。しかし、3rdアルバム以降はエレクトロニックなアプローチを強め、本作でもその流れをさらに推し進めている。ミニマルなエレクトロニック・ビート、オーガニックなシンセサイザーのテクスチャー、深いリバーブをまとったギターが重なり合い、ドリームポップ、シューゲイズ、ダークウェイヴ、ポストパンクを横断しながら、80年代の空気感を漂わせる。

ボーカルは前作『Zombies』に続きApoloniaが担当。美しい歌声がアルバム全体を淡い霧のように包み込み、デヴィッド・リンチ作品を連想させる神秘的かつ退廃的なムードを生み出している。

中でも印象的なのは、#3 “Get Burned”ポストパンク由来の力強いグルーヴが際立ち、踊るには最適なトラックだ。#8 “The Short Term Effect”は、彼らが敬愛するThe Cureのカバー。浮遊感を帯びたエレクトロニック・アレンジによって、原曲の陰影を保ちながらも、Seasurfer独自のサウンドへと落とし込んでいる。Cocteau Twins、The Cure、Drab Majestyなどを好むリスナーは要注目の作品だ。

2026年には数年ぶりにライブ活動を再開。来日経験のあるBuzz Kullとの交流の深さを踏まえると(『Zombies』のカバーアートでApoloniaがBuzz KullのTシャツを着用している)、HANDS AND MOMENT周辺との接点を含め、来日にも期待がかる。

Mareux

Nonstop Romance

Mareux

Nonstop Romance

  • release date /
    2025-06-27
  • country /
    US
  • gerne /
    Coldwave, Darkwave, Gothic, Post-Punk, Synth Pop
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ロサンゼルスを拠点に活動するダークウェイヴ・アーティスト、Mareux(Aryan Ashtiani)の2ndアルバム。2022年のシングル“The Perfect Girl”がTikTokで拡散され、ダークウェイヴ再評価の流れの中で一躍注目を集める存在となった。

前作は冷たく無機質なダンストラックを軸に、冒頭と終盤にドリームポップ的な楽曲を配置した構造だったのに対し、本作ではダンスフロア志向が一段と強化されている。さらにビートはより強靭に、シンセはメロディックかつ多彩な表情を獲得し、冷徹さと高揚感の対比がより明確になっている。

その方向性を象徴するのが#3 “Nonstop Romance”だ。親しみやすいシンセフレーズと跳ねるベースラインが主導するナンバーで、艶のあるボーカルと相まってDepeche Modeを彷彿とさせる完成度を誇る。

さらに#7 “Blue”では、アップテンポなロックビートを導入し、ポストパンクへ接近することでサウンドの幅を拡張している。

ハイライトは#5 “Ébène Fumé”(feat. Riki)。シンセポップ・アーティストRikiがゲストボーカルを務め、Kate Bushの“Running Up That Hill”を想起させる高揚感あるボーカルで幕を開けたのち、レトロウェイヴ的なビートへと滑らかに接続される。きらびやかなシンセと妖艶なボーカルが交錯し、本作の中でも特に甘美でロマンティックな味わいが際立つナンバー。

ダークウェイヴの軸を維持しながらも、ダンスビートの推進力とノスタルジックなロマン性を強化したことで、80sシンセポップやクラブ志向のサウンドを好むリスナーにも強く訴求する内容となっている。ダークウェイヴに馴染みがない方もぜひ一度お試しあれ。

Leonov

Shape of Ash

Leonov

Shape of Ash

  • release date /
    2025-07-04
  • country /
    Norway
  • gerne /
    Doomgaze, Folk, Post-Metal, Post-Rock, Progressive
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Extreme

ノルウェーのドゥームメタル/ポストメタル・バンド、Leonovの1st EP。ポストメタル界の名門Pelagic Records移籍後初のリリースとなる。

Leonovは2010年にノルウェー・オスロで結成。バンド名は初めて宇宙遊泳を行った宇宙飛行士Alexei Leonovに由来する。これまでに3枚のアルバムを発表し、重厚で退廃的なサウンドと幽玄なボーカルを融合した独自の音楽性で、暗黒ドゥーム愛好家から支持を集めてきた。現在の編成はTåran Reindal(vocals & organ)、Rune Gilje(guitars)、Ole Jørgen Reindal(guitars)、Morten Kjelling(bass)、Jon-Vetle Lunden(drums)の5名。

本作には、無力感や不安、葛藤、そしてその先にある解放をテーマとした4曲を収録。#1 “Samarian”は揺らぐようなリズムから始まり、徐々にヘヴィなギターの洪水へと飲み込まれていく。#2 “Auld Ashok”は、粘り気のあるギターリフに幽玄なボーカルが浮遊する瞑想的ナンバー。#3 “Bygg en Menneskekropp”では、ゆったりとしたメランコリックな曲調で、ノルウェーのフォーク・シンガー、Syvert Feedとの掛け合いを軸に展開。物語のワンシーンのようなひと幕を演出する。

ラストの#4 “Shape of Ash”は、不穏なギターの反復とトライバルなドラムが絡み合い、徐々に噴出していくノイズと熱を帯びたボーカルが高揚感をもたらす。最後に解放的なクライマックスへと至る展開は、シャーマンの儀式を楽曲へ落とし込んだかのようだ。本作の中でも、最もシューゲイズ色が濃く現れた一曲となっている。

4曲23分とコンパクトながら、美しさと重さのバランスに優れた好作。Pelagic Records移籍後の新たな一歩として、今後の飛躍を期待させるに十分な内容だ。

FvneralsやKing Woman、Chelsea Wolfeのファンはぜひチェックしてほしい。

Mary Mortem

Phantoms of the Fall

Mary Mortem

Phantoms of the Fall

  • release date /
    2026-02-26
  • country /
    US
  • gerne /
    Doom Metal, Doomgaze, Funeral Doom, Gothic, Post-Metal, Shogaze, Sludge Metal
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Extreme
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Extreme

USオクラホマ州タルサのポストメタル/ドゥームゲイズ・アーティスト、Mary Mortemのデビューアルバム。

Mary Mortemは2018年頃から始動したプロジェクト。貧困や薬物依存、暴力が身近にある過酷な環境で育ち、その孤独感や現実逃避への衝動を音楽へ投影してきた。その背景にはSlipknotやDeftonesなど90〜2000年代初頭のラウドミュージックを入口に、ポストハードコアやモールエモを経由しながら、Chelsea WolfeやNicole Dollangangerといった内省的なアーティストへ傾倒していった経緯がある。

本人は初期音源に否定的な姿勢を見せているが、当初はウィッチハウスやトラップ寄りの作風を展開。本作で初のフルバンド体制へ移行し、ドゥームゲイズ/ポストメタルの領域へと踏み込んでいる。ノイジーなトレモロギターと催眠的なリフ、儚げなクリーンボーカルと悲痛なスクリームが交錯し、随所にAmenraを彷彿とさせる場面もあるが、シューゲイズ由来の幽玄美と浮遊感が、サウンドに奥行きを与えている。

#1 “Dead in Oologah”は幼少期を過ごした土地Oologahの名を冠しており、劣悪な家庭環境の記憶が負のイメージを浮かび上がらせる。アルバムのテーマを暗示する内容となっている。#5 “The Hollowing”は、弔いの鐘のようなギターに虚ろなボーカルが重なり、次第にかきむしるようなノイズへと変質していく中で、“Offer your bones and lie down / The forest is your home”──「骨を捧げて、横たわれ/森がお前の家だ」というフレーズが反復される。自らの意思が強迫観念によって溶解していき、忌まわしい記憶に囚われ続けるサイクルを示唆している。本作の闇深さが最も結実した瞬間の1つだ。

なお、2026年には次回作のリリースも予定されており、前作以上にエモーショナルかつヘヴィな内容になるという。しかし、単なる絶望ではなく、傷や孤独に寄り添い、前へ進むための糧となる作品を目指していると語る。今後の動向に注目したい。

Slow Crush

Thirst

Slow Crush

Thirst

  • release date /
    2025-08-29
  • country /
    Belgium
  • gerne /
    Alternative Rock, Grunge, Post-Metal, Post-Rock, Shoegaze, Slowcore
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Extreme
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Pop
Extreme

ベルギーのシューゲイズ・バンド、Slow Crushの3rdアルバム。

Slow Crushは2017年の結成以来、シューゲイズを軸にグランジ、ポストメタル、スロウコアの要素を横断し、退廃的かつヘヴィなサウンドスケープに幽玄なボーカルを共存させる独自の美学を築いてきた。現在はIsa Holliday(vocals / bass)、Jelle H. Ronsmans(guitar)、Nic Placklé(guitar)、Frederik Meeuwis(drums)による4人編成で活動している。

『Thirst』は、ハードコア/エモ系を擁するPure Noise Recordsへ移籍後初のフルアルバムであり、プロデュースはSvalbardやRolo Tomassi作品でも知られるLewis Johnsが担当。制作は極限的な環境で進められ、高い緊張感と持続するエネルギーを内包した全10曲が生み出された。彼ら自身が「これまでで最も自信作」と語る通り、偶発性と実験性が自然に融合し、サウンドはより多層的に深化している。

#1 “Thirst”は、かつてない激しさで、重厚なリフとドラムが絡み合う一方、Isa Hollidayの歌声は、ノイズとの中に溶け込む「楽器の一部」として機能しており、緊張感と美しさが同居している。

#2 “Covet”はパンクの衝動とグランジの荒々しさをミックスした疾走チューン。ラストに差し込まれるサックスの艶やかな音色が、乾いた大地にうるおいをもたらす。サックスは、プロデューサーLew Johnsのアイデアだそう。

#3 “Cherry”はヘヴィなリズムでじっくりとメランコリーを紡いでいき、ブレイクダウンを経て、ドラムの連打から一気にエネルギーを爆発させる。Slow Crushの美学である静と動、光と闇のコントラストが際立つ一曲。

#4 “Leap”はフォーク的なイントロから轟音へとシフトする構成で、A面にあたるセクションの締めを担う。

#5 “Hollow”は繊細なムードからスクリームへと転じるインタールードで、アルバムのA面・B面の転換点となるよう効果的に配置されている。

#6 “Haven”は星々のような煌めきをまとう美麗なテクスチャーが、光を求めるような愛への渇望を浮かび上がらせる。アルバムの中で最も優美な側面を担う。

#7 “While You Dream Vividly”はピアノのイントロから、揺らぎのあるギターとボーカルが漂うように重なり合う。Havenと並び、本作の夢幻的な側面が強く出た一曲。

#8 “Bloodmoon”はアルバム屈指のダークな一曲で、“Il n’y a que du noir, There is only dark(そこにあるのは闇だけ)”というリリックが示す通り、重厚なサウンドで深い闇にずぶずぶ引き込んでいく。

#9 “Ógilt”、#10 “Hlýtt”はアルバムの収束を担う連続性のあるトラックで、繊細なトーンの導入から、静寂と高揚が波のように押し寄せ、ラストはスクリームを交えながら壮大なクライマックスへと到達する。

幻想的なムードを継承しつつ、ヘヴィネスと没入感をさらに追求した本作は、間違いなくバンドのキャリアにおける集大成といえるだろう。2025年のシューゲイズ・シーンを語る上でも外せない重要作だ。

また2026年には来日ツアーも実現。私が訪れた下北沢SHELTER公演では、轟音とクリアなボーカルが共存する素晴らしい音響で、Wisp、Nothing、Whirrといったシーンの重要アクトに匹敵する高いポテンシャルを見せつけた。ツアーの後に大きな計画が予定されているとのことで、今後の展開にも注目が集まる。

OSNOVA

Rise the Sun

OSNOVA

Rise the Sun

  • release date /
    2025-06-13
  • country /
    US
  • gerne /
    Alternative Rock, Darkwave, Gothic Rock, Industrial, Post-Punk, Post-Rock, Shoegaze
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Extreme

LAのシューゲイズ・バンド、OSNOVAの2nd EP。

2018年にJean-Claude Vorgeack(guitar)を中心に始動し、後にSam Ribeyro(drums)、Caroline McLaughlin(vo.)が加入し、トリオ編成となっている。

本作はシューゲイズとポストパンクを融合したサウンドが特徴。オーロラのように煌めくシンセ、泡立ちながらうねるベース、幽玄にたなびくギター、透明感のあるボーカルがなめらかに溶け合い、満天の星が輝く夜の海を漂うような浮遊感を生む。そこにはかつての4ADのエーテル的な美的感覚が息づいている。

特筆すべきは#5 “Climbing Dues”。ポストパンクの推進力と繊細耽美な歌声が調和し、Sisters of MercyとCocteau Twinsの融合を思わせるナンバーだ。幻想的な世界観の中で高揚感がより際立ち、本作のハイライトとなっている。ゴスとシューゲイズのクロスオーバーは退廃的であるがゆえに、抑制的な曲調になりがちな側面もあるが、OSNOVAはフックのあるボーカルによりしっかりとキャッチーさを担保している点が独自の魅力だ。

なお12月には初期の楽曲をまとめた『Early Singles』もリリースされている。こちらはポストパンク色が強く、“Climbing Dues”のようなロック志向のサウンドが中心となっている。本作が気に入った方は、ぜひチェックしてほしい。OSNOVA – Early Singles(Spotify)

Heretoir

Solastalgia

Heretoir

Solastalgia

  • release date /
    2025-09-19
  • country /
    Germany
  • gerne /
    Blackgaze, Post-Black Metal, Post-Metal, Post-Rock, Progressive
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Pop
Extreme

ドイツのポストブラックメタル・バンド、Heretoirの4thアルバム。

2006年にDavid Conrad(Vo/Gt)のソロ・プロジェクトとして始動。その後、Matthias Settele(Ba)、Nils Groth(Dr)が加入。現在はKevin Storm(Gt)、Stefan Dietz(Gt)を含む5人体制で活動している。アルバムタイトル『Solastalgia』は、“solācium”(慰め)と“algia”(痛み)を組み合わせた造語で、環境破壊による喪失感や苦悩をテーマにしている。

サウンドは前作以上に立体感と迫力を増し、幻想的なメロディと重厚な轟音が鮮やかなコントラストを描く。David Conradのボーカルも表情豊かで、繊細なクリーンボーカルと激情的なスクリームを自在に行き来しながら、楽曲に深い陰影を与えている。

冒頭を飾る#1 “The Ashen Falls”#2 “Season of Grief”は特に強力。シューゲイズ/ポストロック由来の繊細さとブラックメタルの獰猛さが激しく交錯し、哀愁を帯びたメロディとドラマティックな展開で、一気にアルバムの世界へ引き込んでいく。特にドラムが秀逸で、ブラストビートの爆走パートでリズムパターンを使い分け、激しさの中に緩急を生み出している。

前半はヘヴィかつダークな空気感が支配する一方、ピアノインスト#5 “Rain”以降はAlcestを思わせる夢幻的なパートも増加。#8 “Burial”#9 “Solastalgia”で陰鬱さがピークに達した後は、わずかな光も滲ませていく。約1時間の長尺ながら、Alcestの幻想美とDeafheavenの激情を受け継ぎ、起伏に富む構成で描き切っている。アルバム全体を通して聴くことでテーマの本質が理解できる作品だろう。

環境破壊、戦争、経済不安──人類が積み重ねてきた歪みを前に、その嘆きはどこまでも重く響く。本作は、ゆるやかに滅びゆく世界に向けた弔歌であると同時に、それでもなお抗い続けようとする微かな希望も宿している。

EUヘッドラインツアーも決定しており、来日にも期待したい。

Shedfromthebody

Everything Out There Has Teeth

Shedfromthebody

Everything Out There Has Teeth

  • release date /
    2025-10-23
  • country /
    Finland
  • gerne /
    Doomgaze, Drone, Folk, Gothic Metal, Post-Metal
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Pop
Extreme

フィンランドのドゥームゲイズ・プロジェクト、Shedfromthebodyの5thアルバム。

Shedfromthebodyは、フィンランド出身のSuvi Savikkoによるソロプロジェクト。ヴィジュアルアートをルーツに持ち、音楽制作のみならずアートワークやミュージックビデオまで自ら手掛けるDIYアーティストだ。2018年のデビュー以来、ゴシック、ダークウェイヴ、シューゲイズ、ドゥームメタルを横断するダークなサウンドに、北欧フォーク由来の神秘的なメロディを溶け込ませた独自のスタイルを築いてきた。

前作『Whisper and Wane』が北欧フォーク色を強め、催眠的な世界観を描いていたのに対し、本作ではさらにヘヴィかつダークな方向へ進化。プログレッシブなリズムワークも強化され、幻惑的なグルーヴと重苦しい緊張感が全編を覆っている。

#1 “Crossing”は、地を揺るがすような重苦しいドラムとともにダークフォーク風に進行する。静寂の合間に浮かび上がる歌声が一筋の光にように輝くも、再び重々しいギターによって闇に閉ざされる。#3 “Nature's Weapons”は、不穏な5拍子のリズムと禍々しいリフ、吐き捨てるような濁声ボーカルの組み合わせで新境地を提示。濁流のようにうねる展開の中で、静謐なクリーンボーカルが束の間の安らぎをもたらす。

神秘性を保ちながらも、闇の深層へ踏み込み、新たな暗黒神話を築き上げた一作。前作と甲乙つけがたい完成度だが、よりダークなサウンドを求めるリスナーには本作をおすすめしたい。特にDead Can Dance、Chelsea Wolfe、Ethel Cainなどのファンはぜひチェックしてほしい。

Deafheaven

Lonely People With Power

Deafheaven

Lonely People With Power

  • release date /
    2025-03-28
  • country /
    US
  • gerne /
    Blackgaze, Dream Pop, Post-Hardcore, Post-Metal, Post-Punk, Post-Rock,Shoegaze
Light
Dark
Soft
Heavy
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Pop
Extreme
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Pop
Extreme

USカリフォルニアのブラックゲイズ/ポストブラック・メタル・バンド、Deafheavenの6thアルバム。

2010年にサンフランシスコで結成されたDeafheavenは、ブラックメタルとシューゲイズを融合した『ブラックゲイズ』というジャンルを代表する有名なアクトの1つ。2013年の2ndアルバム『Sunbather』は大手音楽メディアで高い評価を獲得。その影響は世界中へと広がり、今ではAlcestSouvenirs d'un Autre Monde』と並び、同ジャンルを象徴する作品としての地位を確立している。現在は、George Clarke(Vo)、Kerry McCoy(Gt)、Daniel Tracy(Dr)、Chris Johnson(Ba)、Shiv Mehra(Gt)の5人で活動している。

これまで作品ごとに方向性を変化させてきたが、大きな転換点となったのが2021年の5thアルバム『Infinite Granite』だ。ドリーミーなサウンドとクリーンボーカルを前面に押し出し、“脱ブラックメタル”へ舵を切った。旧来のリスナーの間で賛否両論を呼んだ一方、純度の高いシューゲイズ/ドリームポップのリスナーからの関心をさらに高める契機となった。

そして本作『Lonely People with Power』は、ブラックメタル色を再び取り戻しながら、スクリームとクリーンボーカル、激情と静寂、ノイズとメロディをバランスよく配置し、これまでのキャリアの集大成というべき作品に仕上げている。

アルバムは、“Incidental”というインタールードを配置して、全体を三部構成のように演出。前半で美しさと激しさを交錯させ、中盤で黒い衝動を解き放ち、後半ではエモーショナルな高揚へ至る流れが、一本の映画のようなドラマ性を生み出している。長尺の傾向があった楽曲も、5分前後に抑えられて即効性がアップし、リスナーの集中力を持続させる効果を生んでいる。また、全員が同じ部屋で同時に演奏・録音したことで、ライブさながらの緊張感と熱量が生まれ、さらにフィジカルの強いサウンドになっている点も大きな強みだ。

#1 “Incidental I”に続く#2 “Doberman”では、嵐のようなブラストビートと獰猛なスクリームが炸裂する一方、メランコリックな轟音ギターや淡いトーンも随所に差し込まれ、これまでのDeafheavenらしさを凝縮した内容となっている。

#3 “Magnolia”は、『New Bermuda』を彷彿とさせる黒さと重さが炸裂する爆走チューン。目覚めた瞬間に霊柩車に載せられ、そのまま時速200キロで墓場へと連行されるような衝撃が襲う。先行公開時には、従来のエクストリーム路線を支持してきたリスナーから大きな反響を集めた。

#4 “The Garden Route”は、繊細なクリーントーンと重厚なギターリフのコントラストで魅せるドラマティックなポストロック/ポストメタル・ナンバー。

#5 “Heathen”は、George Clarkeのクリーンボーカルをフィーチャーした『Infinite Granite』の後継作というべきナンバー。深い陰影を帯びた幽玄なヴァースから、コーラスでスクリームへスイッチし、終盤へ向けてブラストビートとともに一気に熱を爆発させる。歌声は『Infinite Granite』時より美しさを増しており、フロントマンとしての成熟もうかがえる。

#6 “Amethyst”は、ワルツ調の牧歌的なメロディのAlcest風のブラックゲイズだが、ドラムのパワフルさが格別だ。

ここまでの第一章で、全く異なるテイストの5曲を通して、Deafheavenの歩みが集約されている。

#7 “Incidental II” (feat. Jae Matthews)では、ドローン風の不穏な音をバックにBoy HarsherのボーカリストJae Matthewsが妖艶なスポークンワードを披露。突然ノイズが爆発し、禍々しい叫びがこだますると一気にEthel Cain『Perverts』級の底知れない不穏さに包まれる。

第二章の幕開けとなる#8 “Revelator”は、絶え間ないブラストビートと凶悪なトレモロギターに初期ブラックメタルの血が滲む。

#9 “Body Behavior”は、ポストパンク風のリズムにメロディアスなギターが絡むドライブ感のあるナンバー。サビでブラストビートをアクセントとして加えるアレンジが秀逸。

#10 “Incidental III (feat. Paul Banks)”は、InterpolのボーカリストPaul Banksのスポークンワードをフィーチャーしたインタールード。続く第三章でいよいよクライマックスへと移行する

#11 “Winona”は、静かな導入から『Sunbather』を思わせる陽性メロディを一気に放ち、光に満ちた世界を拓く。

ラストを飾る#12 “The Marvelous Orange Tree”は、重厚なウォールオブサウンドに美しいクリーンボーカルが溶け込み、天国へ誘うようなカタルシスをもたらす。長い旅路を締めくくるに相応しいドラマティックな終幕だ。

ブラックメタルの陰鬱さ、『Sunbather』のエモーショナルさ、そして『Infinite Granite』の幽玄美を全てすくい上げ、高い熱量で結実させた本作は、まさにキャリアの集大成と呼ぶにふさわしい傑作だ。Deafheaven、ひいてはブラックゲイズの現在地を把握する上で欠かせない作品となりそうだ。

Split Chain

motionblur

Split Chain

motionblur

  • release date /
    2025-07-11
  • country /
    UK
  • gerne /
    Alternative Rock, Emo, Grunge, Nu-Metal, Post-Punk, Shoegaze
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Pop
Extreme
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Fast
Pop
Extreme

UKブリストルのシューゲイズ・バンド、Split Chainのデビュー・アルバム。

2023年に結成。現在のメンバーはRoberto Martinez-Cowles(Vo)、Jake Reid(Gt)、Oliver Bowles(Gt)、Tom Davies(Ba)、Aaron Black(Dr)の5名。楽曲制作だけでなく、グラフィックや映像、ウェブサイト、マーチまで自ら手掛けるDIYなスタイルで注目を集めてきたバンドだ。初期シングルの段階からTikTokを中心に支持を拡大し、Bad Religionの創設者が運営する名門レーベルEpitaph Recordsから劇的なデビューを飾った。

本作は、シューゲイズとポストハードコア、グランジ、ニューメタルのクロスオーバーが軸となっている。ざらついたギターの質感と浮遊感のあるメロディ、メロディアスな歌唱とスクリームのコントラストが共存し、轟音の中に湿度の高いメランコリーを滲ませている。全11曲・約35分というコンパクトな構成ながら、柔と剛、静と動を軽やかに横断し、強度を保ったまま一気に駆け抜ける。

プレイステーションの起動音で始まる#1 “Under The Wire”は、ヘヴィかつグルーヴィーなリフとビートダウンで、瞬きする間もなく強烈な先制攻撃を食らわせる。一転してメロディックな#2 “bored. tired. torn.”では、メランコリックなサビが高揚感をもたらし、#3 “I'm Not Dying to Be Here”では、アンニュイな歌唱とエモーショナルなサビのコントラストで感情を激しく揺さぶる。この3曲だけですでにインパクトは絶大だ。

さらに特筆すべきは#5 “who am i?”だ。ポストパンク由来の疾走感とゴスの毒気をまとったアグレッシブな楽曲で、バンドのダークな美学が色濃く表れている。また、#7 “Greyintheblue”では、沈み込むような重さと退廃的な空気感、コーラスの幽玄な美しさが強い余韻を残す。

こういったダークな楽曲の背景を語る上で、ダークウェイヴやニューウェイヴを好むベーシストTomの貢献に加え、Type O Negativeからの影響も外せない。Split ChainはライブでType O Negativeの“I Don’t Wanna Be Me”をカバーし、後に音源化も行っているほか、『October Rust』をモチーフにしたマーチを制作するなど、同バンドへの強いリスペクトを表明している。

ハードコア・パンクとゴスのロマンチシズムを併せ持つ点に強く共鳴しているのだろう。アートワークに関しても、Type O Negativeを象徴するグリーンに対し、Split Chainはブルーをメインカラーに採用している(最初のMV『Get Inside』の色調を模索していた時に偶然出会った表現と述べている)。このアプローチからも両者に共通する美学が浮かび上がる。また、Type O Negative自身も影響源としてCocteau TwinsやMy Bloody Valentineを挙げている。これはシューゲイズとゴスの結びつきを示す興味深い接点ともいえる。

総じて『motionblur』は、Deftones-coreの文脈を踏まえつつ、シューゲイズ、エモ、ハードコア、グランジ、ゴスの有機的な融合に成功している。ラウドでありながら浮遊感を失わず、生々しい憂鬱な感情を鮮明に捉える感覚が、このバンドの大きな強みだ。Soul Blind、Narrow Head、Fleshwater周辺のオルタナメタル/ヘヴィシューゲイズを追っているリスナーはもちろん、ゴス/ダークウェイヴを好むリスナーにもフィットするだろう。

結成から現在までを猛烈なスピードで駆け抜けてきたSplit Chainだが、2026年にはアルバム以降初となる新曲“sylvia (i won't belong to you)”を発表し、ツアーも精力的に継続している。"The chain does what it wants.(チェーンはやりたいようにやる)"というバンド内の共通言語が示す通り、その勢いはなお拡大を続けている。Roberto Martinez-Cowlesはインタビューで「日本で演奏する・Deftonesと共演する・アメリカでヘッドライン公演を行う」を3大目標として語っているが、その未来も決して遠い話ではないだろう。