
Autumn's Grey Solace
The Neverending
Autumn's Grey Solace
The Neverending
- release date /2026-03-06
- country /US
- gerne /Darkwave, Dream Pop, Ethereal Wave, Folk, Gothic, Shoegaze
フロリダ州セント・オーガスティンを拠点とするエセリアルウェイヴ・デュオ、Autumn's Grey Solaceの18thアルバム『The Neverending』。
Autumn's Grey Solaceは、マルチ・インストゥルメンタリスト/作曲家のScott FerrellとボーカリストのErin Weltonによって2000年に結成されたデュオだ。2000年代初頭から活動を続けるエセリアルウェイヴ・シーンの代表的存在のひとつである。
エセリアルウェイヴは、ゴシックロックやポストパンクを源流とするダークウェイヴのサブジャンルのひとつで、Cocteau TwinsやThis Mortal Coilに象徴される幻想的で浮遊感のあるサウンドを特徴とする。Projekt Recordsを中心に独自の発展を遂げ、Love Spirals DownwardsやLyciaといった名アーティストを輩出してきた。その系譜を2000年代以降へ受け継いだ存在こそが、このAutumn's Grey Solaceである。
本作『The Neverending』は近年の作品で再び顕著となったボーカル重視の作風を継承しており、Erin Weltonの妖精を思わせる幻想的な歌声と琥珀糖のような輝きをまとったギターは健在だ。しかし、作風にはわずかな変化も見られる。
アルバム前半を彩る#3 “Silver Linings”は、「不幸の中の救い」を意味する慣用句として知られる。そのタイトルが示すように湿度の高いメランコリーの中にも、穏やかな希望の気配が差し込んでいる。抑揚を強めたErin Weltonの歌唱も、その変化を象徴する要素のひとつだ。中盤以降は徐々に影を帯びていくものの、完全な闇へ沈み込むことはない。#6 “Hand Stretched Skies”以降はやや影が忍び寄るが、その奥には柔らかな光が残されている。前作を秋の夕暮れと表現するなら、ここには午後のうららかな空気が滲んでいる。
なかでも印象的なのが#5 “Hey Sorrow”だ。牧歌的な曲調で哀しみに語りかけるこの曲は、中世の吟遊詩人の歌を思わせる趣を備えている。歌詞では「Hey sorrow, send yourself away」(悲しみよ、どこかへ行ってくれ)、「Still waiting for tomorrow」(まだ明日を待っている)と繰り返し歌われる。Autumn's Grey Solaceといえば長年にわたりメランコリーを描き続けてきたが、本作では悲しみに身を委ねるのではなく、その先にある希望へ視線を向けているようにも映る。今日は悲しみの勝利だったとしても、明日には違う景色が待っているかもしれない──そんなささやかな祈りが伝わってくる。
そのため本作は、彼ら特有の幻想美を保ちつつも親しみやすさを増した作品となっている。長年のファンはもちろん、Autumn's Grey Solaceを初めて聴くリスナーにもオススメしたい。
Love Spirals Downwardsと並び、現代エセリアルウェイヴ・シーンの生き証人ともいえるAutumn's Grey Solace。アルバムタイトル『The Neverending』(終わりなきもの)は、25年以上にわたり積み重ねてきた彼らの歩みと、未来へと続く創作の旅路を象徴しているようにも映る。
長らく賢者のような隠遁生活を続けてきた彼らだが、近年はミュージックビデオの公開や過去作品の再発に加え、LP化の構想も語られるなど嬉しいニュースが続いている。最近公開された2人の近影のポストにはライブやツアーを望むファンの声が集まった。今後の活動にも引き続き期待したい。
最後に「アルバムが多すぎてどこから聴けばいいの?」という人のために、個人的なおすすめを挙げておこう。
Autumn's Grey Solace 入門編
2nd『Over The Ocean』
Projekt Records移籍後初のアルバム。光と闇のバランスが心地よく、“Waning Faithful”の深いメランコリーは今なお色褪せない。
4th『Shades Of Grey』
ゴシック色と轟音シューゲイズ色が濃厚な一作。“Angel of Light”は彼らを代表するシューゲイズ・ナンバーのひとつだ。
5th『Ablaze』
キャッチーな楽曲からクラシカルな楽曲、ダークなゴシック路線までを網羅したエネルギッシュなアルバム。Projekt Records屈指のセールスを記録したことにも頷ける名作だ。
12th『Englelícra』
高純度の美しいメロディを極限まで磨き上げた傑作。耽美性という観点ではひとつの到達点といえる。
ここで挙げきれなかった作品もそれぞれ異なる魅力を持っているため、ぜひ気軽に手を伸ばしてほしい。
