
Slow Crush
Thirst
Slow Crush
Thirst
- release date /2025-08-29
- country /Belgium
- gerne /Alternative Rock, Grunge, Post-Metal, Post-Rock, Shoegaze, Slowcore
ベルギーのシューゲイズ・バンド、Slow Crushの3rdアルバム。
Slow Crushは2017年の結成以来、シューゲイズを軸にグランジ、ポストメタル、スロウコアの要素を横断し、退廃的かつヘヴィなサウンドスケープに幽玄なボーカルを共存させる独自の美学を築いてきた。現在はIsa Holliday(vocals / bass)、Jelle H. Ronsmans(guitar)、Nic Placklé(guitar)、Frederik Meeuwis(drums)による4人編成で活動している。
『Thirst』は、ハードコア/エモ系を擁するPure Noise Recordsへ移籍後初のフルアルバムであり、プロデュースはSvalbardやRolo Tomassi作品でも知られるLewis Johnsが担当。制作は極限的な環境で進められ、高い緊張感と持続するエネルギーを内包した全10曲が生み出された。彼ら自身が「これまでで最も自信作」と語る通り、偶発性と実験性が自然に融合し、サウンドはより多層的に深化している。
#1 “Thirst”は、かつてない激しさで、重厚なリフとドラムが絡み合う一方、Isa Hollidayの歌声は、ノイズとの中に溶け込む「楽器の一部」として機能しており、緊張感と美しさが同居している。
#2 “Covet”はパンクの衝動とグランジの荒々しさをミックスした疾走チューン。ラストに差し込まれるサックスの艶やかな音色が、乾いた大地にうるおいをもたらす。サックスは、プロデューサーLew Johnsのアイデアだそう。
#3 “Cherry”はヘヴィなリズムでじっくりとメランコリーを紡いでいき、ブレイクダウンを経て、ドラムの連打から一気にエネルギーを爆発させる。Slow Crushの美学である静と動、光と闇のコントラストが際立つ一曲。
#4 “Leap”はフォーク的なイントロから轟音へとシフトする構成で、A面にあたるセクションの締めを担う。
#5 “Hollow”は繊細なムードからスクリームへと転じるインタールードで、アルバムのA面・B面の転換点となるよう効果的に配置されている。
#6 “Haven”は星々のような煌めきをまとう美麗なテクスチャーが、光を求めるような愛への渇望を浮かび上がらせる。アルバムの中でも最も優美な側面を担う。
#7 “While You Dream Vividly”はピアノのイントロから、揺らぎのあるギターとボーカルが漂うように重なり合う。Havenと並び、本作の夢幻的な側面が強く出た一曲。
#8 “Bloodmoon”はアルバム屈指のダークな一曲で、“Il n’y a que du noir, There is only dark(そこにあるのは闇だけ)”というリリックが示す通り、重厚なサウンドで深い闇にずぶずぶ引き込んでいく。
#9 “Ógilt”、#10 “Hlýtt”はアルバムの収束を担う連続性のあるトラックで、繊細なトーンの導入から、静寂と高揚が波のように押し寄せ、ラストはスクリームを交えながら壮大なクライマックスへと到達する。
幻想的なムードを継承しつつ、ヘヴィネスと没入感をさらに追求した本作は、間違いなくバンドのキャリアにおける集大成といえるだろう。2025年のシューゲイズ・シーンを語る上でも外せない重要作だ。
また2026年には来日ツアーも実現。私が訪れた下北沢SHELTER公演では、轟音とクリアなボーカルが共存する素晴らしい音響で、Wisp、Nothing、Whirrといったシーンの重要アクトに匹敵する高いポテンシャルを見せつけた。ツアーの後に大きな計画が予定されているとのことで、今後の展開にも注目が集まる。
