
Deafheaven
Lonely People With Power
Deafheaven
Lonely People With Power
- release date /2025-03-28
- country /US
- gerne /Blackgaze, Dream Pop, Post-Hardcore, Post-Metal, Post-Punk, Post-Rock,Shoegaze
USカリフォルニアのブラックゲイズ/ポストブラック・メタル・バンド、Deafheavenの6thアルバム。
2010年にサンフランシスコで結成されたDeafheavenは、ブラックメタルとシューゲイズを融合した『ブラックゲイズ』というジャンルを代表する有名なアクトの1つ。2013年の2ndアルバム『Sunbather』は大手音楽メディアで高い評価を獲得。その影響は世界中へと広がり、今ではAlcest『Souvenirs d'un Autre Monde』と並び、同ジャンルを象徴する作品としての地位を確立している。現在は、George Clarke(Vo)、Kerry McCoy(Gt)、Daniel Tracy(Dr)、Chris Johnson(Ba)、Shiv Mehra(Gt)の5人で活動している。
これまで作品ごとに方向性を変化させてきたが、大きな転換点となったのが2021年の5thアルバム『Infinite Granite』だ。ドリーミーなサウンドとクリーンボーカルを前面に押し出し、“脱ブラックメタル”へ舵を切った。旧来のリスナーの間で賛否両論を呼んだ一方、純度の高いシューゲイズ/ドリームポップのリスナーからの関心をさらに高める契機となった。
そして本作『Lonely People with Power』は、ブラックメタル色を再び取り戻しながら、スクリームとクリーンボーカル、激情と静寂、ノイズとメロディをバランスよく配置し、これまでのキャリアの集大成というべき作品に仕上げている。
アルバムは、“Incidental”というインタールードを配置して、全体を三部構成のように演出。前半で美しさと激しさを交錯させ、中盤で黒い衝動を解き放ち、後半ではエモーショナルな高揚へ至る流れが、一本の映画のようなドラマ性を生み出している。長尺の傾向があった楽曲も、5分前後に抑えられて即効性がアップし、リスナーの集中力を持続させる効果を生んでいる。また、全員が同じ部屋で同時に演奏・録音したことで、ライブさながらの緊張感と熱量が生まれ、さらにフィジカルの強いサウンドになっている点も大きな強みだ。
#1 “Incidental I”に続く#2 “Doberman”では、嵐のようなブラストビートと獰猛なスクリームが炸裂する一方、メランコリックな轟音ギターや淡いトーンも随所に差し込まれ、これまでのDeafheavenらしさを凝縮した内容となっている。
#3 “Magnolia”は、『New Bermuda』を彷彿とさせる黒さと重さが炸裂する爆走チューン。目覚めた瞬間に霊柩車に載せられ、そのまま時速200キロで墓場へと連行されるような衝撃が襲う。先行公開時には、従来のエクストリーム路線を支持してきたリスナーから大きな反響を集めた。
#4 “The Garden Route”は、繊細なクリーントーンと重厚なギターリフのコントラストで魅せるドラマティックなポストロック/ポストメタル・ナンバー。
#5 “Heathen”は、George Clarkeのクリーンボーカルをフィーチャーした『Infinite Granite』の後継作というべきナンバー。深い陰影を帯びた幽玄なヴァースから、コーラスでスクリームへスイッチし、終盤へ向けてブラストビートとともに一気に熱を爆発させる。歌声は『Infinite Granite』時より美しさを増しており、フロントマンとしての成熟もうかがえる。
#6 “Amethyst”は、ワルツ調の牧歌的なメロディのAlcest風のブラックゲイズだが、ドラムのパワフルさが格別だ。
ここまでの第一章で、全く異なるテイストの5曲を通して、Deafheavenの歩みが集約されている。
#7 “Incidental II” (feat. Jae Matthews)では、ドローン風の不穏な音をバックにBoy HarsherのボーカリストJae Matthewsが妖艶なスポークンワードを披露。突然ノイズが爆発し、禍々しい叫びがこだますると一気にEthel Cain『Perverts』級の底知れない不穏さに包まれる。
第二章の幕開けとなる#8 “Revelator”は、絶え間ないブラストビートと凶悪なトレモロギターに初期ブラックメタルの血が滲む。
#9 “Body Behavior”は、ポストパンク風のリズムにメロディアスなギターが絡むドライブ感のあるナンバー。サビでブラストビートをアクセントとして加えるアレンジが秀逸。
#10 “Incidental III (feat. Paul Banks)”は、InterpolのボーカリストPaul Banksのスポークンワードをフィーチャーしたインタールード。続く第三章でいよいよクライマックスへと移行する。
#11 “Winona”は、静かな導入から『Sunbather』を思わせる陽性メロディを一気に放ち、光に満ちた世界を拓く。
ラストを飾る#12 “The Marvelous Orange Tree”は、重厚なウォールオブサウンドに美しいクリーンボーカルが溶け込み、天国へ誘うようなカタルシスをもたらす。長い旅路を締めくくるに相応しいドラマティックな終幕だ。
ブラックメタルの陰鬱さ、『Sunbather』のエモーショナルさ、そして『Infinite Granite』の幽玄美を全てすくい上げ、高い熱量で結実させた本作は、まさにキャリアの集大成と呼ぶにふさわしい傑作だ。Deafheaven、ひいてはブラックゲイズの現在地を把握する上で欠かせない作品となりそうだ。
