
The Crush
Samhain
The Crush
Samhain
- release date /2025-10-31
- country /Hong Kong
- gerne /Coldwave, Darkwave, Dream Pop, Drum&Bass, Experimental, Industrial, Jazz, Post-Punk, Shoegaze
香港のポストパンク/シューゲイズ・バンド、The Crushの2025年作EP。
2021年の結成以来、退廃的なポストパンクやダークウェイヴに、ドリームポップやシューゲイズの陶酔美を融合させた作風で注目を集め、2024年には初の日本ツアーも実現した。現在のメンバーはHin(ギター)、Kuro(ベース)、Wilson(ドラムス)、そして前任ボーカリストのCamilleに代わって加入したTze long(ボーカル)の4名。
Tze longの退廃的な歌声と、ストーリー性重視の歌詞により、バンドのサウンドはさらにダークで実験的な領域へと踏み込んでいる。#1 “House of Cards”はポストパンクを軸にしながら、前作にあった4AD的な耽美性を抑え、よりビートを重視した身体性の高いサウンドへとシフトしている。
さらに変化が顕著なのが#2 “Urchin”だ。ジャズやドラムンベースを連想させる変則的でスピーディーなドラミングが、不穏にきしむギター、怪しくうねるベースライン、抑揚を抑えたボーカルと交錯する。随所でサイレンのように鳴り響く管楽器の音が焦燥感を煽り、反復と緊張・緩和の巧みなコントロールによって、高い没入感を維持する。高度なアンサンブルゆえに、ライブでどう再現されるのか、強い興味を掻き立てられる。まさにバンドの新章を象徴する一曲だ。
続く#3 “2224.exe”は、不穏な世界観を引き継ぐ10分超の長尺曲。陰鬱なギターの残響の中で、西暦2224年を舞台にした物語をスポークンワードで紡ぎ、未来都市の情景を浮かび上がらせる。歌詞は、AIやVRが日常化した未来社会においても人と人との繋がりが失われないことを示唆している。
そして本作を締めくくる#4 “Coven”は、初期の彼らのドリームポップやシューゲイズの夢幻的なサウンドへと回帰する。甘美なメロディとオリエンタルな響きが溶け合い、雲の隙間から光が差し込むような美しい余韻を残す。
実験的な要素を取り込みながら、型にはまらない構成で独自の美学を深化させた意欲作。ディストピア/サイバーパンク系のSFに惹かれるリスナーもぜひチェックを。
