minakekke - anti past-future

MINAKEKKE

Anti Past-Future

MINAKEKKE

Anti Past-Future

  • release date /
    2025-04-16
  • country /
    Japan
  • gerne /
    Darkwave, Dream Pop, Electronic, Gothic, New Wave, Trip Hop
Light
Dark
Soft
Heavy
Clear
Noisy
Slow
Fast
Pop
Extreme

日本のシンガーソングライター、ユイミナコによるソロプロジェクト、MINAKEKKEの3rdアルバム。

2017年のデビューアルバム『Tangled』では、シューゲイズやニューウェイヴ、ゴシックの要素を取り入れたメランコリックな世界観を提示し、2022年の『Memorabilia』ではエレクトロニックなアプローチへと舵を切った。そして約3年の月日を経てリリースされた本作は、これまでの歩みを集約しながらも、さらなる飛躍を遂げた野心作となっている。

本作『Anti Past-Future』についてMINAKEKKEはこうコメントしている。

過去と未来に反抗していくことは、
結果的に『今』を全ての時間軸を、自分自身を肯定していくことになるのではないかと考えている
『今』を送るだけで、それだけで充分

アートワークに目を向けると、札束や宝石、酒といった尽きることのない欲望、砂時計が刻む浪費される時間、他人の視線を象徴する目玉や死の概念である髑髏などが、脳を取り囲むように描かれている。これらは、現代人が抱える生きづらさを象徴しているのかもしれない。『今』と懸命に向き合うことでそれらを振り払い、自己を解き放とうとする精神性を体現しているように映る。

そのテーマを表現する音楽性は極めて多彩だ。Cocteau TwinsのElizabeth Fraserを連想させる優美で繊細な歌声は、時にKate Bushのようなエキセントリックな表情をも覗かせる。4AD的な幽玄美を湛えたギターの音色、そして80年代風の脈打つビートが同居し、ゴスやダークウェイヴの趣も色濃く漂わせる。一方で、硬質なエレクトロビートも導入されており、クラブ志向のサウンドにも足を踏み入れている。これまでの作品以上に特定のジャンルで括ることは困難なほど、サウンドの幅が広がっている。

ここからは、ダークな音楽を好むリスナー向けの楽曲をいくつか挙げたい。

#2 “Wheels”
冷たく硬質な4つ打ちのビートに煌めくギターのアルペジオが重なり、歌声が軽やかに飛翔する。GrimesやCrystal Castlesを連想させる未来的なダンスチューン。

#6 “TERRIBLE”
ホラー色はアルバム屈指。John Carpenter風の不穏なシンセの音色に背筋がゾッと冷たくなる。

#8 “C/FALL”
反響するギターとアンニュイな歌声が絡み合うアレンジはSlowdiveの“Sugar for the Pill”を彷彿とさせる。中盤からソフトな4つ打ちビートへとシフトしながら、歌声は輪唱のように重なり合っていき、どこか空虚なムードを滲ませていく。

#9 “Alright”
仄暗い日本情緒を湛えた80年代風のシンセポップ。中森明菜のアルバム『不思議』を現代的にアップデートしたような質感あり。近年のワールドワイドなダークウェイヴ・リバイバルとも共鳴しそうなナンバー。

初期のフォーク的なスタイルから出発し、作品ごとにドリームポップ、シューゲイズ、ゴシック、ダークウェイヴからクラブミュージックまで自在に操りながら進化を遂げてきた彼女の姿は、増築を繰り返すサグラダ・ファミリアのようでもある。それでいて、メランコリックでダークな世界観が貫かれている点は独自の強みだといえる。強烈な個性を放つ各楽曲を、圧倒的な表現力を持つ歌声という唯一無二の武器で束ねたMINAKEKKEの真骨頂といえる力作だ。

ちなみに彼女のライブへ初めて足を運んだのは約10年前で、アコースティックギターとルーパーを駆使した弾き語りのスタイルだった。当時から卓越した歌唱力を持つシンガーとして異彩を放っていたが、音楽性が大きな変貌を遂げた現在、どのようなパフォーマンスを見せてくれるのか興味は尽きない。その進化を見届けるべく、再びライブ会場へと足を運ぶ必要がありそうだ。

余談ながら、当時のライブで披露された“Ekho”という楽曲が今も深く記憶に残っている。感傷的なメロディが胸を打つ名曲でありながら、残念なことにサブスク等での配信は行われていないようだ。いつの日か再び日の目を見ることを願わずにはいられない。