Myriad Drone

A World Without Us

Myriad Drone

A World Without Us

  • release date /
    2025-03-08
  • country /
    Australia
  • gerne /
    blackgaze, doomgaze, post-metal, post-rock, progressive, shoegaze
Light
Dark
Soft
Heavy
Clear
Noisy
Slow
Fast
Pop
Extreme

オーストラリア・メルボルン発のシネマティック・ポストメタル・バンド、Myriad Droneの2ndアルバム。

Myriad Droneは、2016年にShane Mulhollandのソロ・プロジェクトとして始動し、翌年には4人編成のバンドへと発展。1stアルバム制作以降に2名のメンバー変更があり、本作のラインナップはShane Mulholland(Gt/Vo)、Jacob Petrossian(Gt)、Simon Delmastro(Ba)、Frankie Demuru(Dr)となっています。2019年のデビュー作『Arka Morgana』は、YouTubeのポストロック専門チャンネル「Where Post Rock Dwells」で2019年のベストアルバム第5位に選出。私もレビューで絶賛した名作です。

それから6年ぶりとなる本作『A World Without Us』(私たちのいない世界)は、タイトルや映画『ピンク・クラウド』を思わせるカバーアートからして、「世界の終末」がテーマであると思われます。

サウンド面では、Shaneのクリーンボーカルが大幅にボリュームアップしているのが最大のポイント。さらにスクリームも取り入れられ、柔らかな叙情と猛々しい激情とのコントラストがより鮮明になりました。彼のクリーンボーカルは、非常に繊細で美しく、まるでSigur RósのJónsiやAlcestのNeigeを思わせます。前作でも「もっと歌唱パートが増えてほしい」と思っていたので、この変化は大歓迎。曲調もややポストロック寄りで牧歌的なムードが増しており、Alcestへの接近も感じられます。

#1 “A World Without Us”
クリーンなパートから一気に轟音とエモーショナルなボーカルが炸裂。ポストロックらしい静と動のダイナミズムで揺さぶりつつ、中間部では一転して民族調のコーラスが挿入され、ボーカルとユニゾンで盛り上がるAlcest風の展開へシフトします。10分強の長尺ながら掴みは上々。

#2 “Forlorn Hope”
ギターが轟音をブチ撒けながら、神秘的なボーカルと邪悪なスクリームが交錯する様は、まるで神と悪魔による最終戦争(アルマゲドン)。レーベルが「ポストロックとシューゲイズの要素をバランスよく取り入れながら、よりダークなサウンドを追求している」と語る通り、本作を象徴するナンバー。いや〜これは巻き添えを食らった人間の生存が危ぶまれますね。

#3 “DYHAMTTAJ”
プログレッシブなリズムワークに神々しいボーカルが飛翔する壮大なナンバー。

#4 “Longing”
繊細なクリーンボーカルを活かした優美なポストロックで、クライマックスには壮大な轟音でカタルシスを演出。

#5 “Disharmonia”
ブラストビートとトレモロギターで疾走するブラックゲイズ。クリーンボーカルが一瞬光を呼び込むも、すぐに轟音にかき消されて闇へと飲み込まれます。まるで人類が滅びに抗うさまを描いているよう。

#6 “Whereabouts Unknown”
TOOL風の変拍子&民族調のイントロで幕を開け、徐々にボルテージを上げていき、聖歌隊の合唱のような荘厳なクライマックスへと到達します。ドラムのFrankieが閃いたイントロのドラムパターンから、新メンバーがアイデアを持ち寄って完成させた新境地的名曲。「TOOL meets シューゲイズ」はまだ例が少ないながら、じわじわと観測されつつあり、いま私の中で大注目のスタイル。まさかMyriad Droneがそれをやってくれるとは、嬉しい誤算でした。今年のベストチューン最有力候補の1つ!

ラストの#7 “Valediction”は、どこか物寂しくも穏やかなメロディで、余韻たっぷりに幕を閉じます。最後に訪れたこの静けさは、人類が絶えた後の世界を示唆しているかのよう。このアルバムは、いずれ滅びゆく人類への鎮魂歌なのかもしれません。

本年度のポストロック/シューゲイズ界を代表する傑作の1つ。Sigur RósやAlcest、Holy Fawnなどのファンは、必ずチェックよろです!

前作のレビューはこちら▶ Myriad Drone『Arka Morgana』