
PLOTOLEMS
para?anomaly
PLOTOLEMS
para?anomaly
- release date /2025-05-28
- country /Japan
- gerne /alternative-rock, darkwave, gothic, industrial, newwave, noise, shoegaze
東京のオルタナティブロック・バンドPLOTOLEMSの1stミニアルバム。
PLOTOLEMSは、さくれむ(Gt/Vo)のソロプロジェクトとして始まり、2020年7月にしょう(Dr)が加入して本格始動。その後、1st EP『A FICTION』(2020)、2nd EP『A GHOST』(2022)をリリース。現在はフジモト(Ba)が加入して3ピースとなっています。
彼らを初めて知ったのは、シューゲイザー特化型イベント『Total Feedback』の2022年9月公演でした。全くの初見でしたが、キャッチーなバンドが集う中、ひときわダークなサウンドで攻める異質さに衝撃を受けました。
『第一印象はコールドウェイヴ×インダストリアル×シューゲイズ。闇の中に青い炎を灯すような冷たく美しいサウンドで、冷たい音色のキーボードとアンニュイな歌声のマッチングはAsylum Partyといったコールドウェイヴの血脈を。エレクトロ色の強い曲にはSkinny PuppyやSOFT BALLETに通じるセンスを感じました。』とTwitterへ興奮気味なコメントを残しています。そして2nd EP『A GHOST』に触れて彼らの世界観にズブズブとハマっていったのでした。ちなみに2nd EPの推し曲は“This City is Hell”です。
本作においてもオルタナティブロックにシューゲイズ、ノイズ、インダストリアル、ニューウェイヴなどを巧みにブレンドした越境的なサウンドで、彼らが掲げる「Japanese Industrial Horror Dark Alternative」にふさわしい闇深き世界観が徹底的に描かれています。あどけなさと狂気をあわせ持つさくれむ氏のボーカルはさらに表現力が増し、繊細なクリーンボーカルから悲鳴じみた絶叫をも操り、リスナーを狂気の深淵へと誘います。
ここからは各曲の感想に移ります。
#1“見ている”
仄暗い水の底から響く、工場の駆動音のようなインダストリアル。太古の儀式のようなシャーマニックな響きが陶酔へと導く。
#2“int main()”
初期ART-SCHOOLばりに青い衝動と焦燥感をほとばしらせる疾走チューン。本作で最もキャッチーで、ライブ映えは間違いなし。
#3 “4294967296”
ここから一気にPLOTOLEMSらしさ全開。さくれむ氏のシャウトと、グリッチノイズばりの轟音ギターが脳を灼く。荒れ狂うノイズと淡々と鳴り響くキーボードのアンバランスさも病みつきになりそう。そして鬱々と唱えられる数字が破滅へのカウントダウンを予感させる──Wikiによると4294967296は、32ビットCPUが(素直に)管理することができるメモリアドレス空間の上限容量なのだそう。あの世が飽和して行き場をなくした死者がネットを通じて溢れ出してくる……そんなシーンが浮かんできます。そう思うと、死(4)や苦(9)といった不吉な言葉の羅列にも見えてくるから不思議。
#4 “連鎖”
ミニマルなビートに冷たいピアノを散りばめた退廃的なインダストリアル。In Slaughter NativesといったCold Meat Industry産ダークアンビエント/インダストリアルとの共鳴も感じさせ、名状しがたい恐怖をじわじわと心に植え付けていく。
#5 “狂う夢”
シューゲイズ/ポストロック風の導入で幻想的な白昼夢に浸らせておいて、ドス黒いノイズとシャウトで一気に地獄へと突き落とす。ジル・ド・レイばりの鬼畜さについ下卑た笑いが漏れてしまう。
#6 “NECTAR”
甘く気だるげな歌声と脈動するベースの調和にうっとり聴き入っていると、突如ぶっといギターにぶん殴られる。一瞬たりとて油断は禁物、それがPLOTOLEMS。
#7 “paranoia”
内側が鏡張りの箱に詰められたまま、坂道を転がされるような無軌道な展開に揺さぶられる。そこに金属を穿つようなピアノと、砂利をぶちまけたようなギターノイズが襲いかかる。これで気が狂わずにいられようか……
全7曲、計28分。まさに耳で体感するホラー・オムニバス。『Total Feedback 2024』のコンピでキラキラした曲を出して、まさかの陽キャ化?なんて思ったりもしたけれど、まったくもって杞憂でした。この勢いで闇の奥底へと突き進んでほしいものです。
次は『para?anomaly』というタイトルについて考察していきます。
ホラー映画ファンなら、真っ先に『パラノーマル・アクティビティ』(Paranormal Activity)を連想するでしょう。しかし「Paranormal=超常現象」の間に「?」が差し挟まれ、「para」(反する)と「anomaly」(異常)に分解されることで、その異質さが浮き彫りになります。
そのまま「異常の反転」=「正常」と捉えることもできますが、ここで「para」を「parallel」(並行あるいは並列)と置き換えると、「anomaly」(異常)はどこにでも偏在している、というメッセージにも読み取れます。つまりこのタイトルは、こう問いかけているのではないでしょうか──『“異常”があたりまえのように存在しているのなら、それを“異常”と呼ぶこと自体が、すでに異常なのだ』
某漫画の「君らの神の正気は一体どこの誰が保障してくれるのだね?」という台詞にも通じる視点ですね。あくまで私の勝手な解釈なので、可能性の1つとして受け取ってください。
そしてアートワークも魅力の一つ。顔にポッカリと空いた木の洞のような穴が、実におぞましくも美しい。個人的には架空の人物(ロングVer)の顔が掻き消えたカバーアートもTravis Smithみたいで気に入っています。Tシャツが欲しいのでぜひ作ってください(願望は声に出していくスタイル)。
さて、そんなPLOTOLEMSですが、2025年8月3日に初の自主企画が決定しました! 暗黒音楽愛好家はぜひお見逃しなく!
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